昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

「僕は会食で辞意なんか告げていません」世間が注目した“リクシルお家騒動”の裏で…取締役会を手なずけた“創業家のウソ”

『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』より #2

2022/06/09

source : 週刊文春出版部

genre : ニュース, 社会, 企業, 経済

 2018年10月31日、LIXILグループ(現LIXIL)は突如として瀬戸欣哉社長兼CEOの退任と、創業家出身の潮田洋一郎取締役の会長兼CEO復帰を発表。外部から招へいした「プロ経営者」の瀬戸氏を創業家が追い出す形となった。しかし2019年6月25日、会社側に戦いを挑んだ瀬戸氏が株主総会で勝利し、社長兼CEOに“復活”する。

 ここでは、一連の社長交代劇の裏側に迫ったジャーナリスト・秋場大輔氏の著書『決戦!株主総会 ドキュメントLIXIL死闘の8カ月』(文藝春秋)から一部を抜粋。2018年10月31日、取締役会を終えたLIXILグループは記者会見を開き、瀬戸氏の社長兼CEO退任と、山梨広一社外取締役の社長兼COO就任、潮田氏の会長兼CEO復帰を公表。瀬戸氏はその直後、自らを退任に追い込んだ潮田氏の“暗躍”を知ることになる――。(全4回の2回目/1回目から続く

©getty

◆◆◆

瀬戸退任が決議された取締役会では……

 記者会見とアナリスト説明会を終えた瀬戸はその日の夜、簡単な夕食を取りながら長かった1日を振り返っていた。

 取締役会の直前に伊奈啓一郎と川本隆一、川口勉を見かけた。3人は瀬戸の退任に一様に驚いていて、取締役会では疑義を唱えることを約束してくれた。しかし実際に異議を唱えたのは伊奈と川本の2人だけで、その主張はかき消された。川口は退任の経緯こそ聞いたものの、逆に自分が辞任するという話が出ると大賛成といわんばかりの態度を見せたのには驚いたが、「潮田派」が多数を占める取締役会の構成を考えれば、議論の流れは想定内なのかもしれない。

 しかし幸田真音が「今回の人事については、瀬戸さんがCEOを降りてもいいという話があったところから全てが始まった印象がある」という発言は意外だった。自分が辞めるのは指名委員会の総意、そうではなくとも潮田が意思統一をしていると思い込んでいたからだ。

 取締役会で幸田は「用事がありますので失礼します」と言って採決には参加せず、部屋から出て行った。だから発言の真意を質すことはできなかったが、退席する際に、他の参加者に見つからないように「私は瀬戸さんにもう少し長くCEOをやって欲しかった」と書き添えた自分の名刺をそっと瀬戸に渡した。そこには幸田の携帯電話の番号が書かれていた。

 自分も知りたいことがあるし、幸田も話したいことがあるに違いない。そう思った瀬戸は食事を途中でやめてスマートフォンを取り出し、名刺に書かれていた番号に電話を掛けた。そこで幸田が話した内容は瀬戸にとって驚くべきことばかりだった。

z