ミュージシャンで「ラッツ&スター」メンバーの桑野信義さんは2020年に大腸がんが見つかり、現在は寛解に向けて治療を続けている。桑野さんは「抗がん剤治療の副作用は想像を絶するほどつらかった。がんとの闘いは『がんばろうとしないことが大切』と気づいた」という――。
※本稿は、桑野信義『がんばろうとしない生き方 大腸がんになって見つけた笑顔でいる秘訣』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
「ステージに立つ」を目標に治療中止を決断
オレは抗がん剤治療について何かを言える立場ではありません。実際に抗がん剤治療のおかげでうまく手術できた面もあるし、逆に抗がん剤治療を止めたことで早く復帰ができたと思っています。自分の医師たちとよく話し合って、3カ月後にみんなの前でステージに立つという目標のために中止を決断しました。
もし誰かの気持ちが楽になるならと思って包み隠さず書いたから、よかったら読んでください。けど、あくまでオレの場合の話です。いま闘病中の方は自分のお医者さんの意見をよく聞いてください。
2021年4月からのツアーには同行しないと決めたあと、病院で「これからどうするか」を話し合いました。それが3月8日のことです。
結果的には抗がん剤治療を再開することになったんですが、先に人工肛門をとる手術を行う選択肢もあることはあったんです。
だけど、「抗がん剤治療を行っているあいだは手術ができず、抗がん剤治療はあまり、あいだを空けずに再開したほうがいい」ということから、手術より抗がん剤治療の再開を優先したんです。
そのために入院したのが3月16日でした。
翌日、ステロイドとオキサリプラチンを点滴して退院。夜からはゼローダを服用するようになるという段取りはそれまでと変わりませんでした。
ですが……。
「副作用がすごく強くて、ビックリしてる」
その翌日、マネージャーに対して、「副作用がすごく強くて、ビックリしてる」とLINEをしています。