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ストライクでもボールでも判定に野次が飛び…そのときベテラン審判が選手たちを黙らせた“視線の意味”「ベンチが一瞬沈黙しました」

ストライクでもボールでも判定に野次が飛び…そのときベテラン審判が選手たちを黙らせた“視線の意味”「ベンチが一瞬沈黙しました」

『プロ野球 元審判は知っている』より #2

2022/06/14
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 2022年4月24日、ロッテvsオリックスの試合で、審判の判定に苦笑いをしたロッテ・佐々木朗希投手に、白井一行球審が詰め寄った“事件”が物議を醸した。プロ野球における審判の判定や一挙手一投足は、それだけ世間から注目を浴びているのだ。

 ここでは、プロ野球審判生活29年、通算出場2414試合を誇る元審判員・佐々木昌信氏の著書『プロ野球 元審判は知っている』(ワニブックス)から一部を抜粋。球場やテレビでは見ることができないプロ野球の“舞台裏”を佐々木氏が紹介する。(全2回の2回目/1回目から続く

この写真はイメージです ©iStock.com

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ガルベス投手が審判にボールを投げつける 

 思い出に残る試合と言えば、巨人にいたガルベス投手の蛮行です。ガルベス投手は96年にテスト生として来日しましたが、いきなり16勝6敗の好成績を残し、「長嶋茂雄・巨人」のリーグ優勝「メークドラマ」に貢献しました。

 しかし、いかんせん短気でした。中日の山﨑武司選手の頭付近に投げてしまい、山﨑選手が怒って、マウンドに向かい殴り合い。まるで、ヘビー級のボクシングのようでした。喧嘩両成敗ではないですが、もちろん両者退場を宣告されました。それに長嶋監督が怒って、

「何でガルベスが退場なんだ。喧嘩を吹っ掛けてきたのは山﨑だろう」

 巨人の選手を、全員ダグアウトに引き揚げさせてしまったことがあります。

 翌97年もガルベス投手はチーム最多の12勝を挙げました。

 しかし98年、阪神の坪井智哉選手へのボールの判定に不服の態度を取ったあと、ホームランを浴びた試合があったのです。

 長嶋監督に交代を告げられ、ダグアウトに戻る途中、あろうかことか審判団にボールを投げつけたのです。ボールは大きくそれ、大事には至りませんでしたが、球審は激高して乱闘騒ぎに発展しました。私はあの試合、控え審判でグラウンドに立っていませんでしたが、「人にボールを投げつける」という蛮行に、あっけに取られるやら、どうしたらいいのかと慌てふためくやら。