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「整がひたすらしゃべりまくる漫画で…」田村由美が『ミステリと言う勿れ』を“探偵もの”と思ってない理由

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「文藝春秋」2022年7月号より、『ミステリと言う勿れ』(小学館)の作者であるマンガ家の田村由美さんのインタビューを全文公開します。(全2回の1回目、後編に続く)

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『ミステリと言う勿れ』(小学館)は、累計発行部数1600万部突破の人気マンガ。大学生の久能整(くのうととのう)が卓越した洞察力で事件を解決していくストーリーで、謎解きの面白さもさることながら、整が語るセリフの数々が読む人の胸を打つと好評だ。また古典の名言も登場し、ローマ皇帝、マルクス・アウレーリウス(121~180年)の『自省録』(岩波文庫)はマンガをきっかけに話題となり、10万部強も増刷している。著者の田村由美さんはなぜ、名著をマンガに取り入れたのか。

刺さる言葉がたくさんありました

『自省録』とわたしの作品が書店に並んで置かれていることにびっくりしていますし、ちょっと冷や汗が背中に伝うというか、ドキドキしています。岩波文庫さんは惹句〈『自省録』が大きな鍵に!〉とともに、(ドラマ版に主演した)菅田将暉さん扮する主人公・整の写真が入ったコラボ帯まで作ってくださいました。そんなことってあります!?

『自省録』とコラボ

 エピソード6で描いた「ばちあたり夜話(やわ)」(4巻収録)。検査入院した整は、隣のベッドの老人・牛田悟郎が読んでいる『自省録』に目がとまり、ふたりの会話が弾む。

「僕は『あたかも1万年も生きるかのように行動するな。』というくだりがドキッとして肝に銘じようと思っています」

 

牛田「人生は短いからな。この病院でも毎日誰かが死んでる」

 アウレーリウスはローマ帝国五賢帝の1人。『自省録』は、彼が宮廷の自室や戦地で思索をめぐらし、自分への戒めや折々の思想を綴った手記である。

 この本との出会いは10年ほど前、友人で、アニメ『幽☆遊☆白書』の主人公、浦飯幽助の声優などで知られる佐々木望さんから薦めていただいたんです。佐々木さんは「自分の血肉になった」とおっしゃり、読んでみたらわたしにも刺さる言葉がたくさんありました。以来、時々部分的に読み返しています。

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