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 でも読み切りは普段とは違うものを描くことにしてます。静かなホラーやスリラーなんかも好きなんです。なので新作読み切りでは、動きの少ない、感情を表すモノローグも使わない、ワンシチュエーションの会話劇に挑戦してみようと思いました。どこか演劇的なものを目指した部分もあります。舞台に乗ったとしたらこんな感じ、とイメージしたりして。

 エピソード1では、整が殺人事件の犯人だと疑いをかけられ、警察の尋問を受ける。取調室で追及を受けながらも、ただ思いつくことを淡々と語る整を前に、刑事たちはそれぞれの悩みを打ち明けてしまう。娘の反抗期に悩む刑事、夫婦仲に悩む刑事、男社会の警察でもがき苦しむ女性刑事たちと整との会話が繰り広げられ――。

「ミステリと言う勿れ」(フジテレビより)

 そして犯人が見つかったから帰っていいよと言われて帰る……、そんな話にするつもりで考えてたんですが、つい欲が出て会話のついでに殺人事件も解決できないかなって。そうなると犯人はあの人にするしかない……、結果的に事件解決もののようになりました。

 でもこれは整がただただひたすらしゃべりまくる漫画で、台詞が異様に多い。読者の方に受け入れられるか不安でしたが、とても好評だったそうです。編集者さんたちの「なんですか!これ!?」という感想が嬉しかったですね。読み切りだからと気軽な気持ちで描いたものが、たくさんの応援をいただいてこうして連載になったのは不思議な気がします。

探偵ものとは思ってない

 わたしは、元々プロット(物語全体の構成)を書かないスタイルで、最初は話のイントロだけしかなかったりします。

 そうした状況で考え始め、会話を通して物語を作っていきます。たいていわたしは、登場人物たちのセリフを自分ひとりでぶつぶつ喋ってるんですが、そうやって自然に転がっていく会話から思わぬ言葉が出てきたり、意外な展開になったりします。それを頭の中で映像として組んでいく感じです。それからやっと紙に向かいます。毎回起こる事件を考えるのも大変ですが、そこに整の喋りをどう絡めるかが本当に難しくていつものたうち回っています。

 “ミステリと言う勿れ”というタイトルは置いとくとしても、そういう経緯でできたお話なので、基本的に探偵ものとは思ってないんです。読者の方に随時証拠を提示して謎解きを楽しめるようにも描いてないです。整が何を感じてしゃべるか、そこにはこうあってほしいという自分の願いを詰め込んでいます。

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