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「ドローン戦略の優劣が戦いの雌雄を決する…」宮嶋茂樹カメラマンが“ウクライナ・ドローン小隊”従軍で見た「新たな戦争の形」

「ドローン戦略の優劣が戦いの雌雄を決する…」宮嶋茂樹カメラマンが“ウクライナ・ドローン小隊”従軍で見た「新たな戦争の形」

2022/06/27

genre : ニュース, 国際

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 第一次世界大戦では戦車が登場、化学兵器(毒ガス)が実戦に使用された。第二次大戦では航空機が主役となり、それに対抗するためレーダーも開発され、あげく核兵器まで日本に対して使用された。

 認めたくはないが、人類は戦争のたびに科学を大幅に進歩させた。戦後もしかり。フォークランド紛争では仏製エグゾセミサイルが英国海軍を恐怖に陥れた。また東京大空襲や原爆投下という無差別爆撃まで正当化した米軍においては第一次湾岸戦争からピンポイント爆撃が攻撃の主流となり、そして今回のウクライナでの戦いではドローンとジャベリンミサイルの名が世に知らしめることになった。(全2回の1回目)

ハルキウ州北部のロシア国境地帯。ウクライナ軍ドローン情報小隊は3~4基のドローンを展開させる 撮影・宮嶋茂樹

ドローン戦略の優劣が戦いの雌雄を決する

 ロシア軍の侵攻に対するウクライナ軍の反撃の目となったのがまさにドローンであり、その支援によるジャベリンミサイルの攻撃により、ロシア軍戦車はことごとく大破されていた。まさに「ドローン戦争」ともいえるぐらい、ドローン戦略の優劣が戦いの雌雄を決するという、これまでの地上戦の常識をごろっと覆すことになったのである。そんなドローン部隊への従軍取材のため、不肖・宮嶋ここハルキウで待機し続けていたのである。

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 しかし今は戦時中である。そうこっちの都合よく取材が運ぶわけもない。ウクライナの民にとってはまさに生きるか死ぬか、勝って祖国を侵略者から取り戻すか、再び家族や友人を殺し、財産を、仕事を奪ったロシア人の顔色をうかがうだけの毎日にもどるか、そんな緊張の日々に日本人カメラマンの取材なんぞ、まさに鴻毛のごとしである。

ハルキウ州サルトゥフカ地区。団地群が夕日に赤く染まる。このあたり一帯はインフラが完全に破壊され、間もなく闇に包まれる 撮影・宮嶋茂樹

 しかし帰国を1週間後に控えた5月末、今夕出発するという知らせをもたらしたのは、2カ月前イルピン取材をともにしたウクライナのドキュメンタリスト集団のデニスであった。

携帯の電源はオフに 場所が特定されそうな写真も一切禁止

 ハルキウ市某所の町中にあまたある、ロシア軍の攻撃で廃墟となった建造物前で待ち合わせた。前線までの案内人はドローン部隊のパイロット(オペレーター)のスラーバと名乗った。スラーバは、ロシア語、ウクライナ語でも「栄光」の意であり、男性の名としても人気である。

 自己紹介ののち早速前線宿舎に向かう。クルマは特になんの特別な防弾装備もない日産のRV車。すぐに発進……と思ったが、助手席のデニスが思い出したように振り返った。

「携帯電話持ってるよな? それで写真も撮るよな?」

 2度うなずく。

「それGPSの位置情報が記録されるんじゃないか?」

「え?」