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「ここでは殺さなければ殺される…」カメラマン宮嶋茂樹が感じた"ウクライナドローン小隊”のリアル

「ここでは殺さなければ殺される…」カメラマン宮嶋茂樹が感じた"ウクライナドローン小隊”のリアル

2022/06/27

genre : ニュース, 国際

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 数々のスクープ写真で知られる報道カメラマンの宮嶋茂樹さん(61)こと不肖・宮嶋がウクライナのドローン小隊を従軍取材することに。不肖・宮嶋はウクライナ軍第93旅団長だったエフゲン大佐、通称「アダム」が指揮を執る第10大隊を基幹に新編された、戦車、砲兵、歩兵部隊を統合した部隊隷下のドローン情報小隊の司令部へ。隊員たちへの自己紹介が済んだ後、彼らとともに宿舎へと向かい、従軍取材1日目を終えた―ー。(全2回の2回目。前編から読む)

◆ ◆ ◆

本降りの雨...最も頼りになる戦友カラシニコフの手入れを

 午前6時。夜明けとともに目覚めた。ぼちぼち皆もお目覚めのようで、寝袋をかたずけだしたり、横になったままスマホを見つめる者もいる。ホントすごい。前線までWiFi電波が飛んでいるのは。 1階に降り、半長靴の紐を結び直し、外の新鮮な空気を吸いにでる。

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「え?」

 雨が降っとる。しかも結構本降り。何やったんや? 昨夜の満天の星は?

 こりゃあ初の前線取材は苦労するわ。雨と雨無しでは撮影の苦労は段違いである。防弾チョッキに加え雨具も必要になる。

 小隊長のユルゲンも起きてきた。雨音を察するや、「しばらく待機」の命令を下した。

 揚力を軽量な回転翼で得ているドローンにとって雨は敵以上の大敵である。肝心の目となるレンズが濡れると充分な解像度も得られない。

 朝食も夕食と同じ指令部まで出かけ、パンと作り置きされていたスクランブルエッグとハムでサンドイッチをつくり、ほおばり、コーヒーでのどの奥に流し込む。

銃の手入れも兵の重要な仕事である。いざという時、撃てなければ、自分や仲間が殺されるのである 撮影・宮嶋茂樹

 宿舎に戻っても雨がふっても、やることはある。射撃訓練に武器の手入れや装備の確認である。特にドローン情報小隊の唯一の武器となるAK-47小銃、通称カラシニコフは最も頼りになる戦友である。皆食後の腹ごなしとばかりに、手慣れた手つきでカラシニコフを分解してはオイルを差し、銃身にウエスを通し、火薬カスや汚れをふき取っては組み上げる。最後はボルトを引き、地面に向け引き金を引き、ドライファイアー(空撃ち)する。

 バチン! という撃鉄が落ちる音で作動が正常なのを確認する。銃の手入れのしかた、その状態を見ただけで、その部隊の精強さや練度が計れる。銃に錆が浮いていたり、やたら引き金に指をかけ撃ちまくる軍隊は碌なもんでない。

 そしてかれらドローン小隊が愛用するカラシニコフこそ人類史上最高の小銃(アサルト・ライフル)と言われる。1949年、ソ連の元戦車兵ミハイル・カラシニコフによって開発され、ソ連軍に正式採用されて以来、70年以上世界の戦場で使われ、ギネスブックにも最も大量に生産された軍用銃として掲載されているぐらいである。

 まさにジャングルから砂漠まで少々泥に濡れても、砂を噛んでもちゃんと作動する。構造も単純で安価、掃除も楽とまあ世界のテロリストにも愛用されてきたぐらいである。ユルゲン小隊も隊長のユルゲンだけはサープレッサー(消音器)付きだが、全員がカラシニコフである。