文春オンライン

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genre : ビジネス, 商品

セブンプレミアムも空白地帯を見つけ出した典型です。

流通のPB(プライベートブランド)商品は一般的に価格面での「手軽さ」に傾倒します。これに対し、NB(ナショナルブランド)商品と同等以上の「上質さ」を実現しながら、価格面の「手軽さ」をちりばめることにより、PB商品の空白地帯に投入したセブンプレミアムはコンビニ、スーパー、百貨店のどの業種、どの店舗でも大ヒット商品になりました。

さらに、本格的な味を求め、専門店と同等以上の品質を手ごろな値段で提供するワンランク上のセブンプレミアムゴールドのシリーズも、より「上質さ」を高めて、新たな空白地帯を開拓し、ヒット商品になりました。

金の食パンのように、一般的なNB商品より価格が上でも、「上質さ」をきわめたことで、食パン市場の空白地帯に埋まっていたお客様の潜在的ニーズを掘り起こすことができたのです。

また、セブンカフェは1杯100円という「手軽さ」の中に高品質という「上質さ」をちりばめて大ヒット商品になりました。

なぜ拡大路線に転じたスタバの業績は急落したのか

トレードオフが不明確で、「上質さ」も、「手軽さ」も中途半端になると、お客様の選択からはじかれます。『トレードオフ 上質をとるか、手軽をとるか』(ケビン・メイニー著、プレジデント社刊)という本では、中途半端な状態を「不毛地帯」と呼んでいます。お客様が、特に価値を感じなくなる状態のことです。

一例として、一時業績が急落したアメリカのスターバックスをあげています。

スターバックスは「ゆったりとしたひと時を過ごすためのオアシス」という体験価値を提供し、「上質さ」を基本戦略としてお客様の絶大な支持を得ながら、そこにはコーヒーショップの「手軽さ」もちりばめられていた。

ところが、拡大路線に転じ、出店攻勢をかけて以降、手近な店になった半面、「上質さ」は薄れ、かといってマクドナルドほどの「手軽さ」もなく、不毛地帯に陥り、業績が低迷した。そこで再び、「上質さ」へと軌道修正したことで回復していったわけです。