過去の延長上にとどまっている限り、必ず不毛地帯に陥ります。
もう一ついえば、日本とアメリカでは不毛地帯の広さが違います。所得階層が大きく分かれるアメリカでは、ウォルマートのように低価格が「手軽さ」に結びつきやすい。
一方、一人の消費者が100円ショップから専門店まで使い分ける日本では求めるレベルが高く、不毛地帯のゾーンがはるかに広いのです。
重要なのは、常にトレードオフの内容を考え続ける戦略的な思考です。いま求められる「上質さ」「手軽さ」は何か、そこにどんな「手軽さ」「上質さ」をちりばめるか。ひとたび動きを止め、変化対応を怠ると不毛地帯が忍び寄ることを忘れてはなりません。
ものごとを「再定義」することで新しい価値を生み出す
固定概念をくつがえす、あるいは、予定調和を壊すとは、ものごとの既存の定義を打破し、本質から外れない限りで、新しい定義を打ち立てていくことです。
このとき、忘れてはならないのは、ものごとの定義は固定的でもなければ、一つだけとは限らない、いくらでも再定義できるということです。そして、ものごとを再定義すれば、これまではなかった価値をお客様に提供できるようになるということです。
わたしがセブン‐イレブンでおにぎりや弁当の販売を提案したとき、まわりから「おにぎりや弁当は家でつくるものだ。売れるわけがない」と反対されました。それは、おにぎりや弁当についての既存の定義に縛られた発想でした。
おにぎりは、いまやセブン‐イレブンだけでも、年間約23億個販売され、おにぎりといえば、「コンビニで買うもの」という定義が定着するにいたっています。
「年間10億杯以上」コーヒーを日本一売る店になるまで
既存の商品の再定義による大ヒットの典型は、セブン‐イレブンのセルフ式ドリップコーヒー「セブンカフェ」でしょう。
2013年に本格展開してから約1年間で、累計販売数が4億5000杯と、数あるカフェやファストフード・チェーン店を上回る規模の売り上げを記録し、ヒット商品番付で東の横綱にランクされました。