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「2度の妊娠出産でアイデンティティー崩壊」一度は男として生きるのを諦めた“30代”を襲った発狂寸前の苦悩

source : 提携メディア

genre : ライフ, 人生相談

関東在住の向坂壱さん(仮名・50代)はトランスジェンダー男性(Female to Male)だ。体は女、心は男であることに子供時代から深く悩んだが、専門学校卒業後しばらくして男性と結婚。2人の子供を出産するが、性別違和のストレスによりアイデンティティが崩壊し、「離人症」を発症。その後、性同一性障害を専門に扱う精神科を受診し、「性同一性障害」と診断されたことをきっかけに「一度きりの人生、悔いなく生きたい」と思い直し、性別移行を決意した――。(後編/全2回)

写真=iStock.com/show999 ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

【前編のあらすじ】今年5月、関東在住の向坂壱さん(仮名・50代)は戸籍の性別を女性から男性に変更した。小学校高学年から中学卒業まで、体は女だが、心は男である自分の性自認に深く悩んだ。高校入学を機に、性自認について考えることを意識的にやめたものの、その後、パニック症を発症。いったん男性として生きていくのを断念し、男性パートナーとの交際を経て結婚すると、今度は新たな精神的な病に見舞われた――。

アイデンティティーの崩壊

22歳の時にパニック症を発症し、その後、離人症も発症した向坂壱さん(仮名・50代)。ひとり暮らしから関西の実家に戻って過ごすうち、徐々に落ち着きを取り戻した向坂さんは、考えた。

「学生時代からアルバイトが長続きせず、就職してからも転職を繰り返してきた自分は、働くことに向いていないのではないか」
「パニック症や離人症もあり、誰かに養ってもらうことを視野に入れて人生設計するのが最善なのではないか」

結局、以前から交際していた漫画家の男性からのプロポーズを受け入れ、1997年、向坂さん27歳、男性32歳で結婚。夫は向坂さんと結婚する数年前から、漫画の仕事が完全になくなり、ほぼニートのような生活をしていた。結婚後は彼の実家が会社を経営していたため、夫婦そろって親の会社に入り、向坂さんは事務員として働き始める。

ところが29歳で長男を、33歳で長女を出産すると、それまで経験したことのないほどのひどい離人症の発作が起き、四六時中“自分がわからない”という狂いそうな状況に陥る。育児はもちろん、家事もままならないため、食事は夫に弁当や総菜を買ってきてもらった。

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