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永田町で取材して分かった「政治部記者はなぜ態度がデカいのか」

『トップリーグ』(相場英雄著)――著者インタビュー

政治家・田中角栄の謎なら読者も喜んでくれるのでは

『トップリーグ』(相場英雄 著) 角川春樹事務所 本体1600 円+税

 ベストセラーとなった『震える牛』や東芝の「不適切会計」事件をモデルにした『不発弾』で、社会が抱える歪みを描いてきた相場英雄さん。新作『トップリーグ』では政治とカネの問題に斬り込んだ。

 大和(やまと)新聞の記者松岡直樹(まつおかなおき)は、入社15年目にして経済部から政治部へ異動になる。勝手が違う政治部で戸惑いながらも、なぜか官房長官番に抜擢される。一方松岡と同期入社だった酒井祐治(さかいゆうじ)は、かつて政治部のエースだったが、政治を巡るある思惑に巻き込まれ、退社を余儀なくされていた。現在は週刊誌記者として活躍し「都内の埋め立て地で発見された1億5千万円」の真相を追っている。かつて同期だった2人の運命が交錯するとき、昭和史に残る一大疑獄が姿を現す……。

「ロッキード事件がモデルですが、この事件には未解決の部分があって、僕はこういう話が大好き(笑)。昔は空いた時間に未解決事件をよく調べていました。そうすると、小説じゃなければ書けない面白くて怪しい話がたくさん出てくるんです。田中角栄(たなかかくえい)は、政治とカネの問題を考える上で象徴的な人物ですよね。僕も新潟出身で親近感もありますし、死後20年以上を経て角栄ブームが起きるほど人気もある。それくらい強い印象を残した政治家の謎を題材にすれば、読者もきっと喜んでくれるんじゃないかと」

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 昭和史の謎と共に読みどころとなるのが、政治家と政治部記者とのひと筋縄ではいかない関係性だ。そもそもこの小説の構想は、政治部記者の振る舞いに対する違和感から始まった。

「僕が経済部記者だったとき、大臣に取材をして運よくコメントが取れたので速報を流そうと思ったら、政治部の記者にガッと肩を掴まれた。何かと思ったら、合わせ(政治家の発言を各社で擦りあわせること)がまだだ、と止められてしまって。経済部は、ロイターに20秒遅れるだけでデスクから怒られる世界なので、唖然としました。また有名な話ですが、田中角栄のロッキード事件が報道されたとき、政治部の記者は『あんなの知ってたよ』ってみんな言ってたらしい。それなら早く記事にしてくれって思いますよね(笑)。つまり事実を掴んでいてもすぐに記事にしないのが政治部のカルチャーなんです。それ以来、政治部って何をしてるところなのかという疑問がずっと頭のどこかにありました」