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あとは片付けない家族にイライラしてしまう。そもそも自分もやっていないのに、『片付けなさい!』と子どもに怒鳴っている自分が嫌という人もいます。いわば家の中に地雷があるというか(笑)。だから私は『片付けは地雷除去作業ね』と言うんです」

廊下やベランダがクローゼットに…

実際に家の中を見ると、アイランドキッチンに食器が山積みになっていたり、ひと間が「物置部屋」と化していたり。ベランダに干した服を取り込まず、その中から選んで着るので、ベランダが「クローゼット」という女性や、廊下がクローゼットになっている女性もいるという。

受講生の中には「もう離婚したい」とまで思い詰めて、参加した人もいた。大手メーカーでマネージャーを務め、中学生と高校生の子どもをもつ40代後半の女性だった。

「彼女の根底には、とりあえずこの家から逃げたいという気持ちがあったようです。でも、家を片付けることは現実と向き合う作業でしかないので、一つずつのモノに対して本当に必要かどうかを考えますし、家族の意見や希望も聞かなければなりません。そして相手がやってくれたことには『100倍の〈ありがとう〉を言ってください』と勧めています。照れくさくても、子どもや夫に感謝の気持ちを伝えたら相手はうれしいし、もっとやってあげようという気持ちになるでしょう」

片付けの基本は「コミュニケーション能力」でもあると、西崎さんは考える。この女性は家を片付けるなかで夫婦の会話が増え、夫の本音を聞くこともできた。妻の仕事を応援したいと、家事も進んでやってくれるようになった。彼女も安心感が増して、今では夫婦むつまじいツーショット写真が送られてくる。

女性たちの自己肯定感の危機

「良いお母さんにならなければならない、私がしっかりしなきゃいけないという意識にとらわれていると、自分自身が苦しく、家族にも強要してしまいます。けれど家が片付くことで気持ちにも時間にも余裕ができるから、自分のことを少し許せるようになって、家族の愛情も受け入れられるようになります。すると表情が柔らかくなるし、肩の力が抜けて、本来の自分に戻れるんですね」