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しかし、好きな習いごとはつづけられた

なかでも逃げに逃げたのは剣道です。毎週日曜早朝6時に道場に行き、2時間の座禅をしたあとは道場の掃除を1時間、昼まで稽古……。

子どもの精神を鍛えることに重きをおいた剣道場は真心から子どもの成長を願う先生たちが運営していましたが、こんなきついこと、僕に耐えられるはずがありません。

取りたてていいわけをするでもなく、「きつい! 無理! やめる!」と伝えたところ、母からは「やめたいなら自分の口でやめることを伝えなさい、それが武士道」との答え。

まったく話が通じていません。僕はあの道場になんとしてでも近づきたくないのです。

苦肉の策で僕はやめる旨を手紙に書き、道場の戸口にはさむことにしました。

生半可な言葉では「たるんでる!」と連れもどされてしまうかもしれないため、「まったくやる気がありません! つづける気力がまるでなくてごめんなさい!」と強気の逃げメッセージを記したことをおぼえています。

「どうか僕を見捨ててほしい!」という願いは先生の心をくじき、電話がかかってくることもなく無事見放されることに成功しました。

「そんな逃げてばっかじゃロクな大人になれない、あなたより小さくてもがんばっている子もいるのに……」なんて母親に嫌味もいわれましたし(事実ロクな大人に育っていませんが)、水泳やお絵かき教室など好きな習いごとはいっさいやめようとは思いませんでした。

僕にとってみれば、嫌なことをつづけるよりも、好きな習いごとをすることや友達と遊ぶことの方がよっぽど重要だったのです。

やるべきことから目を背けることにまったく抵抗を感じなかった

中学高校も「なにかに青春を燃やした」経験がまったくありませんし、大学受験も本当は美大・芸大に行きたいという希望を持っていましたが、入試科目のデッサンを乗り越えることもデッサンの練習を毎日つづけることも不可能だと自覚しリタイア。

母の「早稲田以上の大学ならお金を払う」という言葉に、「タダで4年間のモラトリアムを手に入れられる」とそのとき取りうるもっとも楽な道と感じての大学進学でした。周囲の異様にギラついた雰囲気になじめず受験塾には1年で2日しか行きませんでしたし、大学も所沢キャンパスへの往復4時間の通学時間に心がくじけ、早々に通わなくなりました。

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