昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

窓も開けられない異常な量、ネズミの糞尿まみれのゴミ屋敷「ため込むことでしか生きられない」苦しさを抱えた80代男性

source : 提携メディア

genre : ライフ, ライフスタイル, 社会

これまで私は取材のため、生前・遺品整理会社「あんしんネット」の作業員として、多くのゴミ屋敷の片付けにあたってきた。どこも壮絶な現場だった。悪臭が漂い、大量のハエやゴキブリの発生、真っ黒に変色した食品、人の糞尿もあった。不衛生な現場であるために、切り傷から雑菌が混入して足切断となった作業員もいた。その一つひとつの現場を、この連載で取り上げ、著書『潜入・ゴミ屋敷 孤立社会が生む新しい病』(中公新書ラクレ)にまとめた。

そして最近、ゴミ屋敷に新たな傾向がみられるという。あんしんネット事業部長で孤独死現場の第一人者で整理コーディネーターの石見良教さんは「一人暮らしの高齢者宅が大変なことになっている」と説明する。

「地域で独居高齢者が取り残されています。コロナ禍の自粛生活によって居住者の身体機能・認知機能が衰え、居室内のゴミ部屋化の傾向が顕著に見られます。地域の包括支援センターの職員からも同様の指摘がされ、われわれにもそういった部屋の依頼が多く舞い込みます」

実際の様子を見たいと思い、今年5月下旬、私は1年ぶりにゴミ屋敷の片付けに参加した。高齢男性が住むその室内は、大量の物で埋め尽くされ、ねずみの糞尿にまみれていた――。(第21回)

撮影=笹井恵里子 キッチン - 撮影=笹井恵里子

娘は「すべてのものを処分してほしい」と頼んだ

現場は、東京都内にある2階建ての木造アパート。階段をのぼって2階の、一番奥の部屋である。

ドアを開けると目の前に台所、すぐ右に折れるとその先は想像以上に広く、ふた部屋が続いていた。玄関から部屋の奥まで人一人がかろうじて入れる程度の隙間がある。居住者は、妻と離婚した一人暮らしの80代男性。その娘が久々に訪ねると、なんと室内で男性が倒れていたという。まだ寒い時期だったが、大量の物によって室温が保たれたために、生き延びられたそうだ。

男性はすぐに病院に運ばれ、現在も入院中とのこと。父親がいない隙に娘は「室内のすべてのものを処分してほしい」と考え、あんしんネットに依頼してきたのだ。

z