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【第二部】 相続特集〈相続対策〉

自分らしい最期を迎えるには、のこされる家族に自分の想いや希望を伝えておきたいもの。それは身体機能や判断力が衰えてからではなく、元気なうちに始めておくことが肝心だ。相続対策のポイントや注意点について有識者に聞くとともに、その受け皿となるサービスや商品などについて紹介する。

ファイナンシャル・プランナー 深野 康彦氏に聞く
分配政策で課税強化の可能性 相続対策は元気なうちに検討

実現には至っていないものの、相続・贈与に関する税制の見直しが話題になることが近年、増えてきた。いずれにせよ相続対策は、早めの検討が重要だ。金融特集に続き、相続対策について深野康彦氏にアドバイスしてもらう。

持ち直す不動産価格税 負担が増える可能性

 7月の参議院選挙では自民党が大勝した。次の参議院選挙までに衆議院の解散・総選挙に踏み切らなければ、岸田政権にとってこれからの3年間は大きな国政選挙のない「黄金の3年間」と呼ばれる期間になる。腰を据えて経済政策に取り組む好機になる。「成長と分配の好循環を掲げる岸田政権は、資産課税を強化する可能性がある」――。こう指摘するのはファイナンシャルプランナーの深野康彦氏だ。

 岸田首相は昨年、株式の譲渡益や配当金といった金融所得にかかる金融所得課税を強化する考えを示したものの、株式市場や経済界からの反発で撤回したことがある。

 そこで今年5月には「貯蓄から投資へ」を後押しする資産所得倍増プランを打ち出したが、金融所得課税の議論がいまだにくすぶり続けるのは、分配を掲げる以上、その選択肢として何らかの課税強化が考えられるからだ。

 「分配政策を推進する原資として、2005兆円に及ぶ個人金融資産を活用する可能性は十分あると思います」と深野氏。いまだ実現していないものの相続税と贈与税の一体化や、暦年課税制度の見直しといった話はこれまでに何度もささやかれてきた。相続や贈与を検討しているのであれば、早めに準備した方がいいかもしれない。

 株価は低迷しているものの不動産価格は持ち直している点も見逃せない。7月に発表された路線価(1月1日時点)では、全国約32万地点の標準宅地が前年に比べて0.5%上昇した。路線価は、相続税や贈与税の算定基準となるため、今回の上昇により資産が増えていなくても相続発生時に思わぬ税負担が発生する可能性もある。

アプリで始める終活 家族との共有も容易

 とはいえ、相続対策において節税対策から検討するのは得策ではない。まずは家族間でトラブルにならないよう遺産分割のための対策を検討するべきだ。被相続人は生前に財産を整理するとともに、相続に対する考えや希望を家族と共有しておくといいだろう。

 最終的には遺言を残しておくことが相続を「争族」にしないためには重要だが、いきなり遺言書を書くのもハードルが高いかもしれない。そんな時は、終活の一環としてエンディングノートを書くことから始めてはどうだろう。

 昨今では、アプリで手軽に始められる終活やエンディングノートなどもある。そうしたツールを通じて、家族と情報共有しておけば、次のステップとして遺言書の作成にも取り組みやすいはずだ。

 最近は「自分の財産を社会のために役立てたい」との思いから遺贈・寄付を検討する人も増えている。その場合も遺言書を作成すれば実現可能だ。

困ったら専門家に相談 証券会社もその選択肢

 遺産分割対策の次に検討したいのは納税資金対策だ。あらかじめ納税額を想定し、金融資産で賄えるかどうか確認しておきたい。相続税は、現金による納付が原則であるため、相続財産が不動産に偏っている場合などは、次世代が相続税を支払えなくなる可能性があるので注意が必要だ。

 そして最後に検討するのが節税対策だ。生前贈与を活用すれば相続財産そのものを減らすことにもつながる。「この順番を間違えないためにも元気なうちに終活をスタートしておくことが肝心です。そして困ったら専門家に相談してもいいでしょう」と深野氏。

 相続の相談というと信託銀行がその代表だが、昨今では証券会社でも幅広くサポートしてくれる。資産を守りながら確実に次世代に承継するソリューションはもちろん、セカンドライフの暮らしのサポートまで幅広く力になってくれる金融機関もあるのでぜひ活用してほしい。

相続対策を検討する順番

【STEP1】遺産分割対策
終活、エンディングノート、遺言信託などで思いを伝える

【STEP2】納税資金対策
不動産の組み替え、生命保険の活用などで納税資金を確保

【STEP3】節税対策
生前贈与、不動産活用などで税負担を軽減する

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