文春オンライン

未解決事件を追う

2022/08/21

 そんななか、合同捜査本部が色めき立つ出来事もあった。

 10年4月、警察がかねてからマークしていた30代の男が、浜田市内の大型店舗内で女子学生を盗撮し、逮捕されたのだ。Hさんの事件について事情を聞き、指紋採取も行っていた人物だった。しかしながら逮捕後、入念な家宅捜索が行われたものの、犯行につながる物証は発見されなかった。

 性犯罪の前歴者、前述した猟師や医療関係者、さらには車両、空き家への捜査など、捜査対象は無限に広がっていった。

 前出の元捜査関係者は語る。

「実際、事件1年後には、捜査対象の絞り込みができなくなり、迷走していました。無作為にしらみつぶしに調べていく捜査が続けられ、時間ばかりが経っていった」

性犯罪の前科があった犯人

 そんな折、約40万件といわれるNシステムの記録を解析していた捜査員の一人が、Hさんが行方不明になった時期の前後から、浜田市内に頻繁に出入りする車両があることに気付いたのだ。

 調べを進めていくと、山口県下関市に本社がある住宅設備会社で働いていた矢野富栄(よしはる=事件当時33)にたどりついた。

 事件当時の矢野は、浜田市に隣接する益田市にある1軒家を、事務所兼社宅として住んでいたのである。

 さらに矢野には性犯罪の前科があることも判明した。28歳だった04年8月、3件の強制わいせつ事件の容疑で逮捕され、懲役3年6月の実刑判決を受け、服役していた。犯行内容は3件とも酷似している。路上で女性を刃物で脅し、わいせつ行為に及んだというものだった。

 捜査線上に矢野の存在が浮かんだ具体的な時期については明らかではないが、16年の夏頃、矢野の勤務先の本社などに捜査員が赴いている。

 さらに、同年の10月前後には、矢野が住んでいた一軒家が、10日以上の家宅捜索を受けていたことが判明。また同じ時期、近隣のガソリンスタンドに捜査員が矢野の写真をもって、給油記録の閲覧を求めていた。

 この段階で彼の容疑は固まっていたと見られる。

遺体の一部が見つかった臥竜山を捜索する捜査員 ©共同通信社

 県警によると、矢野の関係者が県警に提出した、矢野の所有するデジカメとUSBメモリーには合わせて57枚、重複分を除くと40枚の静止画像が残されていた。

 その40枚は、すべて09年10月26日深夜から翌27日未明にかけて、約1時間半の範囲内で撮影された写真だった。Hさんの遺体の損壊前後が撮られ、風呂場での解体の様子や、解体に使用した文化包丁、さらには解体作業をする矢野の足などが写り込んでいたという。