なぜ介護現場は「虐待が起きやすい」のか
冒頭の本間理事長は「コロナ禍だからこそ、施設は『見える化』につとめ、家族との情報交換をより重視すべきだ」と語る。
「高齢者の身体は、飲んでいる薬や抱えている病気によって、すぐにアザができてしまいます。多くの方は親の介護のときに初めて高齢者の身体と向き合いますから、面食らうことも多いんです。それでも定期的に親に面会していれば、『このアザはどうしたの?』『ちょっとぶつけちゃってね』と、そのたびに原因を確認することができます。
しかしコロナで半年や1年に1回程度しか会えないとなると、突然アザだらけになって、格段に弱った親と対面することになってしまう。そうなれば『なにかあったんじゃないか』と疑ってしまうのは普通の反応です。
だからこそ施設側は、コロナ禍では入所者の様子についてご家族とこまめに連絡を取り合う必要があります。アザについても医者であれば形や色から原因が分かる可能性もありますから、その原因を追及してご家族と共有し、改善策をともに考えていく。そうしたきめ細かな対応が、いま求められているんです」
そもそも過酷な介護現場では、「虐待が起きやすい環境がある」という。
「ストレスがたまる現場では、どうしても言動が粗暴になってしまう職員が出てしまう。入所者に強い口調で話す、食事介助の際に手をたたく、服が汚れたまま放置しているなど、『これくらいなら大丈夫か』といった不適切な介護がエスカレートして度を超えた虐待行為に発展していくことはよくあります。
施設はそうした実態を正しく認識し、職員の教育をしたり環境整備をしたりしなくてはいけないんです」
コロナ禍によって、泥沼と化した岡山・津山の虐待騒動。いまだ収束する見通しは立っていない。