文春オンライン

source : 提携メディア

genre : ビジネス, 社会, 働き方

2008年に発生したリーマンショックの影響を受けて、同年暮れには日本で派遣切りが多発した。複数のNPOなどが日比谷公園(千代田区)に、生活困窮者が年を越せるように「年越し派遣村」を開設するなど大きな騒動となった。その余韻も残っていたため、「今度は正社員まで切るのか!」という怒りが、社会全体で共有された。

しかし、そのうちだんだんと、企業側の問題が働く側の問題にされ、ついには「働かないおじさん」という辛辣(しんらつ)かつ失礼な言葉が飛び交うまでになった。

「仕事が残っていても平気で、『もう時間なんで』って帰るんですよ!」
「『そんなにお金もらってないもんね?』って開き直って、仕事拒否するのもムカつきます!」
「こんなこと、なんで俺がやるんだとか、不満ばっかり。もう、やめてほしい!」
「ずっと隣で居眠りされるのも、嫌になりますよ!」
「うちのシニアはコミュニケーション拒否!」

これまで私がインタビューした人たちからは、繰り返しシニア社員批判を聞かされた。

50代への厳しい“まなざし”

むろん、私とて、周りを困らせる幼稚なおじさんたちがいることを否定するつもりはない。

しかし、特定の集団に対するネガティブなイメージが、長い時間をかけてじわじわと社会に根づくと、そこに差別や偏見が生まれ、結果的に“集団隔離”につながっていく。

やる気満々だったはずの白木さんもまた、50代への厳しい“まなざし”による「ステレオタイプ脅威(Stereotype Threat)」で心を痛めつけられてしまったといえる。

ステレオタイプ脅威とは、「自分と関連した集団や属性が、世間からネガティブなステレオタイプを持たれているときに、個人が直面するプレッシャー」と定義され、その脅威にさらされた人は不安を感じ、自分自身もそれをみずからの真の姿だと考えるようになる。

このようにしてステレオタイプが内面化してしまうと、自尊心が低下し、自分への期待値を下げ、自己不信などを引き起こして、その能力や性格にまでダメージを与えることがわかっている。