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genre : ビジネス, 社会, 働き方

「半径3メートル世界」を取り戻す

冒頭の白木さんは、1人でがんばりすぎた。彼が争っていたのは、会社ではなく、社会の“まなざし”だったのではないだろうか。

「会社の言いなりになってたまるか」と、怒りを前に進むエネルギーに転換する前に、私の言うところの「半径3メートル世界」を充実させることから始めればよかった。

「会社」という主語で「私」を語るのではなく、「半径3メートル世界」の「私」として主体的に動くことは、「社会のまなざし」への最良の対処になる。

若い世代には、「仕事に役立つ情報」を惜しみなく伝えればいい。同世代でくすぶっているおじさん社員とは、50代の生きづらさについて語り合うだけでもいい。

「ちょっといい?」と声をかけられる距離(=半径3メートル世界)の人間関係を充実させれば、他者は白木さんにまなざしを注ぐ存在から、白木さんに「傘を差し出してくれる」存在に変わっていく。

半径3メートル世界は、社外にもある。自宅でたまには妻の家事を手伝ってみたり、マンションですれ違う人に挨拶してみたり。通勤途中で、ミンミン鳴いているセミの鳴き声に夏の終わりを感じたり、道端の名前も知らぬ花に感動してみたり……。

遠くばかり見ていたのを近くに視線を移すと、意外に楽しい世界が広がっていることに気づかされるものだ。

50代、腐るのはまだ早い

そうやって、半径3メートル世界が充実してきてから、新しい人生の第一歩を踏み出しても決して遅くはない。「3メートル以内」だけでなく、「3日以内」くらいの感覚で、「今」を楽しみ、幸せを感じ、仕事も自分のマックスの能力から「3割減」くらいの気持ちで取り組めばいい。

焦らなくても大丈夫だ。だって、案外、自分が気にするほど周りは「あなた」のことなど見ていないし、気にもしてない。

後ろを振り向けば、きっと「あなた」に励まされている人々の笑顔が見えるはず。

腐るな50代!

河合 薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.)、気象予報士
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。著書に『残念な職場』(PHP新書)、『他人の足を引っぱる男たち』『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『THE HOPE 50歳はどこへ消えた?』(プレジデント社)などがある。

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