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“Made in Sabae”眼鏡が生まれる現場を訪ねて

日本有数の地場産業として広く知られるようになった鯖江の眼鏡。そのモノ作りの現場を知るべく、鯖江で随一の規模を誇るシャルマンの工場を訪ねた

世界に誇る匠の技術と繊細な感性が生む技巧の美

 福井県鯖江市。眼鏡の国内生産シェアの9割を占め、労働人口の約6人に1人が眼鏡産業に携わっているという一大産地だ。鯖江の眼鏡作りの特徴は、各工程を専門の工場が担う分業体制にある。各工場が得意分野に集中し、技術に磨きをかけることで産地全体の技術向上を図ってきた。なかでもチタンの加工技術は世界最高峰と評される。

 今回我々が訪れたのは、鯖江では珍しく自社工場で一貫生産を行なっているメーカーであるシャルマンだ。パーツの製造メーカーからスタートした同社は、1974年に一貫生産に舵を切り、2009年には眼鏡にとって理想的な新素材「エクセレンスチタン」を独自開発した。現在は、その優れた弾力性と形状記憶性を活かした「ラインアート シャルマン」をはじめとした自社製品の生産を行なっている。

 眼鏡は小さなアイテムながら製造の工程数が多く、その数はメタルフレームで250を超える。数百トンのプレス機や最新のレーザ接合機などマシンを使用する工程から、人の手を要する工程まで、最新技術と昔ながらの手作業を要所で使い分けながら作られていく。左に紹介する工程は、ほんの一部に過ぎない。細かいパーツを組み上げていくので、それぞれの精度がものをいう。細かなパーツのプレスや切削、ロー付けなど、いずれも0.1ミリ単位の誤差も許されない緻密な作業だ。

 また、精度と同時に装飾性も要求されるのが眼鏡作りである。職人の手により表面は艶やかに磨かれ、色付けの工程においては注射器のような器具でパーツを着色する繊細な作業も。精度の高い工業製品にして、その手間暇のかかり方は、もはや工芸品の域。日本の眼鏡産業は、職人の高度な技術と繊細な感性により支えられているのだ。

プレス

メタルフレームの各パーツは、元々はすべて丸線状や板状のチタン。専用の金型を使い、様々な種類のプレスを幾度も重ねることで、パーツの形状へと仕上げていく。

磨き

組み立てられた前枠部分は、表面のなめらかさを均一に整えるため手作業で1本ずつ磨かれる。職人の経験と勘がものをいう工程だ。その後、さらにバレル研磨機の中で約24時間磨かれる。

色付け

ネオⅡといわれる独自の色付け工程。注射器のような器具を使い、カラー液を線状のエクセレンスチタンに手作業で施す。職人芸の極致だ。

左上/福井県鯖江市にあるシャルマン本社。左下/ハンガーに掛けられ、次の工程を待つフレーム。
右上・右下/様々な機械が稼働する工場内。そのセッティングは、すべて人の手で行われる。
左上/福井県鯖江市にあるシャルマン本社。左下/ハンガーに掛けられ、次の工程を待つフレーム。
右上・右下/様々な機械が稼働する工場内。そのセッティングは、すべて人の手で行われる。

作りもデザインもこだわりあり “Made in Sabae”ブランド7選

1 LineArt CHARMANT

独自開発の素材と技術が生む優美で機能的な一本

しなやかなバネ性と形状記憶性を備えた、エクセレンスチタンをテンプルに使用。ブラックとピンクの2本のラインがサークル状のモチーフを通る繊細なデザインが、横顔を芸術的に彩る。頭部を優しく包み込むような柔らかな掛け心地も魅力だ。

「XL1699」¥45,100/ラインアート シャルマン(シャルマン カスタマーサービス TEL 0120-480-828)


2 999.9

同素材を異なる質感で魅せるフルメタルモデル(写真上)

レンズを保持するリムには、板状のチタンを使用。プレスや長時間のバレル研磨により柔らかな質感を表現し、コンビネーションのようなスタイルに。メタルブロウバーをベースにしたフロントは、安定感のあるフレームバランスを実現している。

「S-972T」¥48,400/フォーナインズ(フォーナインズ TEL 03-5797-2249)

異素材が美しく調和し豊かな表情を演出(写真下)

柔らかな印象のプラスチックリムに、繊細なメタルパーツを組み合わせ表情豊かに仕上げたミックスフレーム。鮮やかな色合いとメタルの上品な質感が、目元に気品を宿す。フロントとテンプル(つる)をつなぐヒンジにはU字型の独自パーツが搭載され、心地よい掛け味に寄与。

「M-75」¥42,900/フォーナインズ(フォーナインズ)


3 EYEVAN 7285

クラシカルなスタイルに斬新なディテールを採用(写真上)

鼻パッドを排し、メタルパーツが鼻梁を囲う「クリングスサドルブリッジ」を採用。フレームの重みを感じにくく、すっきり掛けられるのが特徴だ。レンズを保持するリムはブラックで彩られ、スマートなデザインながらメリハリのある目元を演出。

「183」¥47,300/アイヴァン7285(アイヴァン 7285 トウキョウ TEL 03-3409-7285)

クリアカラーから透ける繊細な技巧が秀逸(写真下)

5mm厚のプラスチックフロントは、ゴールドのメタルパーツを内包。両サイドのメタルパーツからテンプルにかけて施された彫金模様と相まって、大胆ながら気品のある存在感を漂わせる。フレンチヴィンテージ風のスタイルを、高度な技巧により独創的に仕上げた一本。

「570」¥52,800/アイヴァン 7285(アイヴァン 7285  トウキョウ)


4 Banerina

βチタンがもたらす柔らかなフィット感が魅力

弾力性に優れるβチタンをテンプルの素材に採用。装飾性と機能性を兼備した独自の“マルチアーチシステム”が、掛けていることを忘れるほどの柔らかなフィット感をもたらす。フロントは大人の知性が漂う品の良い横長ボストンシェイプ。ダークブルーのツートーンカラーがシックな印象を後押し。

「BA-7015」¥41,800/バネリーナ(青山眼鏡 TEL 0778-54-8050)


5 BJ CLASSIC COLLECTION

テンプルから覗く彫金模様が横顔に風格をもたらす

セルロイド製のウェリントン。テンプルに埋め込まれたメタル芯に優美な彫金模様を施し、デザインの一部に昇華。これは「芯張り」という手間と時間と技術を要する技術の為せる業で、この手法を継承する専門職人の手により、1本ずつ丁寧に作られている。

「SHINBARI SH-P565」¥49,500/BJ クラシック コレクション(ブロスジャパン TEL 0778-52-7075)


6 JAPONISM

鯖江が誇るチタン加工技術の粋を尽くした立体造形

太い丸線のチタン材に数十回に渡り様々なパターンのプレス加工を施し、360度どこから見ても美しい造形を実現。パーツによりカラーや質感を切り替えるなど、細部まで手が込んでいる。テンプル内側には弾力性に優れるβチタンのパーツを内蔵させ、重厚なルックスながら掛け心地は柔らかだ。

「JN-1006」¥107,800/ジャポニスム(グロス銀座 TEL 03-5579-9890)


7 Zoff

優れた技術・素材でこそ叶う繊細で上品な佇まい

肌馴染みの良い柔らかなシェイプのボストンフレーム。素材には、軽くてバネ性に優れるNTメタルを採用。ブリッジやテンプルには精度を要するこだわりの繊細な彫金模様を施すなど、シンプルなデザインのなかに鯖江の高度な技術が宿る。一部店舗限定。

「ZU223006_43E2」¥16,600(セットレンズ代込み)/ゾフ(ゾフ カスタマーサポート TEL 0120-013-883)


Photographs:Hirofumi Kamaya
Writing:Mirei Ito

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