昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

《鎌倉殿の“善児”怪演》「第1話から『首チョンパ』」俳優・梶原善(56)に盟友・三谷幸喜がつけた注文

「文藝春秋」10月号「巻頭随筆」より

2022/09/11

「事を成すごとにトレンド入り、恐ろしや」

「善、大変なことになっているよ!」

 NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の放送後、三谷幸喜さんからそんなメールが届いた。僕が演じた善児が、SNSで話題になっているとか。驚きつつも人を殺めている身なもんで「ええっそうなんですか、でもそんなに盛り上がられても……」と、そっけなく返事をしたと思う。

 善児を演じるにあたり三谷さんからの注文は「殺気がなく、とても殺し屋にみえないけど、いざとなったら殺気みなぎる感じ」。善児にとっては、庭の草むしりも人を殺めることも同じテンションで「へえ」と、仕事を淡々と実行する。出番を重ねるうちに、三谷さんから「とうとうトレンド1位になっちゃったよ!」と、またメールが届く。「事を成すごとにトレンド入り、恐ろしや」と返事をした。

架空の人物・善児を演じた ©NHK

 実は第5話の台本を読んだときは愕然とした。義時の兄の宗時を手にかける事に、「ええ宗時兄ちゃんを俺がぁー……」。宗時は北条家を盛り立ててよく頑張っていたのに。片岡愛之助さんのお芝居も前へ前へ向かって行く感じが大好きだったから、まさか善児が! 当の善の方は本当にショックだった。撮影現場で共演者の方に久しぶりに会えるのは凄く嬉しい。が、今回ばかりはそうも言っていられない。善児との出会いは即ち別れ、殺められてしまう……。撮影が終わるごとに本当に亡くなったわけではないが共演者の冥福を祈った。

殺し屋の怪演が話題に ©NHK

 全ての撮影が終わって数日は善児が体から離れなかった。白状すると、ちょっと寂しかったのかもしれない。もっとも共演者の山本耕史くんは「善児が抜けないのはマズいですね。早く抜いて下さい」と心配してくれたが。そのあと善児はふらーっとどっかへ行ってしまった――。

z