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同意書には『致死率0.01%』という記載が

 8月31日、中島さん親子は済生会横浜市東部病院を訪れ、女性のA医師による診察を受けた。そこで中島さん夫妻は初めて、「肝生検」という言葉を耳にした。

「診察が始まってすぐに、『肝生検で肝臓の組織を採取しないと原因はわからない』と言われました。初めて聞く言葉でしたし、肝臓に針を刺す検査だと聞いて怖かったのですが、専門のお医者さんが言うのだからそれ以外に方法はないんだろう、と思いました」(朋美さん)

 検査は早い方が良いというA医師の勧めもあり、その日のうちに莉奈ちゃんの入院が決まった。邦彰さんは診察後、研修医として勤務していたB医師から肝生検の同意書へのサインを求められた。

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「そこに『致死率0.01%』という記載がありました。心配になって『1万人に1人は危ないということですか』と聞くと、『書かなければいけない決まりだから記載されているだけで、実際は死ぬような検査ではない』と言われました。『小児の肝臓に関して日本一のベテランの医師が行うので、心配もなく安全です』とも聞かされ、それならということでサインをしました」

様子がおかしいと何度伝えても、診察や検査はしてもらえず

 一晩の入院を経て、9月1日の午前中に莉奈ちゃんの肝生検が行われた。検査に立ち会ったのはA医師とB医師に加え、肝生検のベテランであるC医師、研修医のD医師、そして看護師の5名だった。しばらくして検査が終わると、別室で待機していた朋美さんは部屋に入るよう看護師から促された。

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「検査のときに動かないよう手が包帯でベッドに固定されたままで、可哀想だなというのが最初の印象でした。ずっとグズっているのが気になって看護師さんに聞くと、『局所麻酔をしてるからまだ寝ているような時間なのに、なんでだろう』と言われて心配で……。看護師さんから『母乳や水をあげてもいい』と言われたのでゆっくり母乳をあげると少し落ち着いたんですが、寝たままの体勢だったせいか、すぐに吐いてしまいました」

 仕事を早退して昼過ぎに病院へと駆けつけた邦彰さんの目にも、莉奈ちゃんの呼吸の荒さは気がかりに映った。検査から1時間以上が経っても莉奈ちゃんの容態は改善せず、ベッドサイドのモニターのアラームが頻繁に鳴り続けていた。中島さん夫妻は、看護師や術後管理を担当していたB医師に苦しそうな莉奈ちゃんの様子を再三伝えたが、装置をつけ直すなど簡単な処置がなされるばかりだった。

「手足が冷たくなっていると看護師さんに言うと『じゃあ靴下を履かせましょうか』と言われて、素人ながらそれは違うんじゃないか、と……。様子がおかしいと何度伝えても、診察や検査はしてもらえませんでした」(朋美さん)

 肝生検から3時間が経過した頃になってやっと病室を訪れたベテランのC医師にも、両親は莉奈ちゃんの異変を訴えた。しかし、C医師からの返事に二人は耳を疑った。