昨年8月、東京メトロ・白金高輪駅で、会社員の男性が硫酸をかけられ重症を負った事件。傷害等の容疑で起訴された花森弘卓被告(26)の初公判が9月20日に行なわれ、出廷した花森被告は「間違いないです」と起訴事実を認めた。

 花森被告と被害者男性は、大学のサークルで先輩・後輩の間柄だったという。何が花森被告を残忍な犯行へと駆り立てたのか。事件の背景を追った当時の記事を再公開する(初出:2021年8月29日、年齢、肩書等は当時のまま)。

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 東京の高級住宅地・白金での“硫酸事件”で、静岡市葵区に住む大学生の花森弘卓(ひろたか)容疑者(25)が8月28日に沖縄県内で逮捕された。

 事件は8月24日夜、全身黒ずくめの花森が赤坂見附駅から不動産会社に勤める会社員男性Aさん(22)を待ち伏せ尾行したことで始まった。溜池山王駅でAさんと同じ車両に乗り換えて白金高輪駅で下車、Aさんが改札を出ると数メートル後ろにぴたりとつけ、出口のエスカレーター付近で、追い抜きざまに持っていた硫酸をふりかけた。

白金高輪署に護送された花森容疑者 Ⓒ文藝春秋 撮影・宮崎慎之輔

 Aさんは顔にやけどを負い、失明こそまぬがれたが両目の角膜が損傷し全治6カ月の傷を負った。Aさんの後ろをたまたま歩いていた会社員女性(34)も液体が足にあたり軽傷を負った。

「硫酸をかけた時に自分も浴びたのか、逮捕された花森は顔や手にやけどの跡がありました。大学時代を過ごした沖縄で逮捕された時は現金数十万円を所持していて、長期間の逃亡を企てていたと考えられます。28日に東京へ護送され羽田空港へ到着した時は、報道陣を一瞥して後はうつむいて歩いていました」(社会部記者)

花森容疑者 Ⓒ文藝春秋 撮影・細田忠

父母があいついで他界

 静岡県静岡市で育った花森は、私立高校で1年留年したのちに沖縄の琉球大学農学部へ進学。今回被害に遭った男性は、同大学の映画サークルの後輩だという。

 花森は父が有名な整体師、中国人の母も医療関係の仕事に就く裕福な家庭で育ったが、その両親は早くに他界してしまった。その影響もあったのか4年生で琉球大学を退学し、地元に戻り静岡大学農学部に編入した。両親と暮らした2階建ての一軒家に1人で住み、伯父(父の兄)が後見人として面倒を見ていたという。