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「行方不明者を生きて帰す」元警察官の主婦、愛犬である警察犬との捜索活動で現場復帰

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genre : ニュース, 社会, 働き方

嘱託警察犬の委任状を手にほほ笑む綱島久美子さんとヴァラー(綱島さん提供)

 「行方不明者を生きて帰す」。警視庁の元警察官で徳島市の主婦綱島久美子さん(60)は今年、35年ぶりに「現場」に戻った。現役時代の経験を生かし、嘱託警察犬の愛犬「ヴァラー」と行方不明者の捜索活動に従事するようになったためだ。7月には失踪した女性を見つけるという成果も挙げた。

 嘱託警察犬は一般家庭で飼育されている犬で、道府県警の審査合格後、各警察からの依頼で行方不明者の捜索などに当たる。ヴァラーは8歳の雌のシェパードで、1月に徳島県警に採用された「新人」嘱託警察犬だ。

 1984年に警視庁に入庁した綱島さんは元来の犬好き。女性警察官が警察犬を連れて歩く様子を見て自分も担当になりたいという気持ちがあったが、出産を機に約3年半で退職した。

山登り中に椅子に腰掛けて見詰め合う綱島久美子さんと嘱託警察犬のヴァラー(綱島さん提供)

 地元・徳島市に移住後の2014年からペットとしてヴァラーを育てていたところ、しつけを依頼していた女性から嘱託警察犬にどうかと提案を受け、「警察犬に関わりたい」との思いが再燃。週4回の訓練を4年間積み、県警の審査会に合格し「ヴァラー号」として採用された。

 採用から半年後の今年7月、自宅から失踪した90代女性の捜索依頼を受けた。気温30度を超す真夏日。発見が遅れれば命の危険もあった。一刻を争う中、枕カバーの匂いを頼りにしたヴァラーがしきりに用水路を気にしていたことから、同行していた県警の警察官に上流の山中捜索を提案。暗くぬかるんだ道を進み、出動から約40分後、自宅から300~400メートル先の山道から外れた崖下の草むらで倒れていた女性を無事に保護した。

 「35年以上前の経験が生きた」。綱島さんは「捜索の際、警視庁時代を思い出した」と振り返った。数日かけて埼玉県から都内まで歩いた高齢男性を保護したことがあり、高齢者が疲れを忘れて予想外の行動を起こすことを知っていたという。

 出動5回目で人命を救ったヴァラー。綱島さんは、「信頼関係を築き、行方不明者を生きて帰すという目的を忘れずに『人犬一体』で捜索を続けていきたい」と意気込んだ。

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