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座右の銘は「理屈と情熱」ーー日本生命社長が語る会社の原点とは

文藝春秋創刊100周年記念 トップインタビューVol.12

PR提供: 日本生命

コロナ禍でデジタルシフトが加速する中でも「人は力、人が全て」と語る清水博社長。激動の時代でも変わらない日本生命の原点とは。『文藝春秋』編集長・新谷学が詳らかにする。


清水 博氏

日本生命代表取締役社長

新谷 学
聞き手●『文藝春秋』編集長

変わらぬ「人」の力
変わるための「デジタル」化

新谷 日本生命は、グループ全体の顧客がおよそ1467万人で、昨年度の「保険金・年金・給付金」支払額は約2.5兆円。1日あたりでは実に69億円。そんな業界のマーケットリーダーである御社から見て、生命保険業界を取り巻く状況は、大きく変わりつつあるのではないでしょうか。

Hiroshi Shimizu
1961年、徳島県生まれ。京都大学理学部卒業後、'83年に日本生命保険入社。商品開発部長などを経て、2012年常務執行役員、'13年取締役常務執行役員、'16年取締役専務執行役員、'18年から現職。
Hiroshi Shimizu
1961年、徳島県生まれ。京都大学理学部卒業後、'83年に日本生命保険入社。商品開発部長などを経て、2012年常務執行役員、'13年取締役常務執行役員、'16年取締役専務執行役員、'18年から現職。

清水 私が入社したのは1983年。この40年で最も大きく変わり、今後の事業にも影響を与えるのは、お客様の行動の変化です。以前は保険加入に対して受け身の方が多かったのが、能動的に検討される方が増えています。

新谷 私もそうでしたが、社会人になると営業職員の方が会社に来て、その方のおすすめプランで保険に加入する、みたいな感じでした。変化の一番の理由は、インターネットの普及ですね。

清水 はい。いまのお客様は、ご自身で保険の情報を収集して、分析と決定をされます。その変化に合わせて営業コンサルティングを変えることが重要なテーマです。

新谷 デジタルへのシフトは、コロナ禍で加速しましたか。

清水 営業職員、代理店、銀行の窓口という販売チャネルでは、現在も9割以上が対面です。その中でデジタルツールの活用が格段に増えて、対面との組み合わせにチェンジしてきたのが、この2年半です。

新谷 「デジタル三種の神器」という営業ツールがあると聞きました。

清水 事務手続きと顧客管理用のタブレット。お客様との連絡用スマートフォン。3つ目が画面共有システムです。営業拠点のPCとお客様のPCの画面を同期、離れていても同じページを見ながら契約の手続きなどを進められます。

 実は日本生命では2012年に、業界に先駆けて契約時の印鑑を廃止し、申込書を電子化するなど、早い段階からIT化が進んでいたんです。一方、お客様とのコミュニケーションにおいては遅れていましたので、この2年半で加速度的に進めました。現場の営業職員や管理職たちは本当によく頑張ってくれています。

新谷 フェイス・トゥ・フェイスで濃密な関係を築いてきた営業スタイルからすると、現場には抵抗感があったのではないですか。

清水 ありましたね。お客様と定期的かつ継続的に会いましょうと会社が推奨して、営業職員もその価値を認めてきましたから。しかし、デジタルは利便性に繋がることがわかってきました。お客様の中には「わざわざ来てくれなくても、必要な情報だけ送ってくれれば十分」と言う方もいらっしゃいますので。

新谷 我々も、コロナ禍で人と会えなくなったら、仕事にならないのではと心配したんです。ところが、世界中どこにいる人でもリモートで取材できることに気付いて、新たな可能性が広がりました。

清水 我々も以前は遠方にお住まいのお客様にも会いに行っていましたが、デジタルを活用すれば、画面越しでお顔が見られて手続きもできる。そのメリットを実感したのが、デジタルの効用を感じた初期の事例ではないかと思います。

デジタルツールを活用し、画面越しでお客様とのコミュニケーションが可能になった。「“人・サービス・デジタル”で、お客様と社会の未来を支え続ける」日本生命グループが掲げる目標のもと、日々の営業活動に取り組む。
デジタルツールを活用し、画面越しでお客様とのコミュニケーションが可能になった。「“人・サービス・デジタル”で、お客様と社会の未来を支え続ける」日本生命グループが掲げる目標のもと、日々の営業活動に取り組む。

新谷 清水社長は「人は力、人が全て」が信条で、「職員は永遠に日本生命の原点」だとおっしゃっています。

清水 保険というのは加入時よりも、加入後のアフターフォローが重要なんです。将来への備えとしてどんな保障がいいのか、自分ではわかりませんよね。そこで保険のプロとやり取りしながら、納得するものを決めていくのが加入時です。

 その後10年20年と経てば、お客様の生活や家庭状況は変わりますから、必要な保障のあり方も変わっていきます。それに合わせて最適な保障を提案し続けることが、保険の価値を最大限にします。

新谷 契約後こそ、営業職員の出番なんですね。

Manabu Shintani
1964年生まれ。早稲田大学卒業後、文藝春秋に入社。『Number』他を経て2012年『週刊文春』編集長。 ’21年7月より現職。
Manabu Shintani
1964年生まれ。早稲田大学卒業後、文藝春秋に入社。『Number』他を経て2012年『週刊文春』編集長。 ’21年7月より現職。

清水 その通りです。お客様に対して「お変わりありませんか。いまの保障で最適ですか」と常に対面で問い続けられるのは営業職員だけです。したがって未来永劫、営業職員が販売チャネルの中核です。日本生命が人で成り立つ会社であることは、この先もずっと変わりません。

新谷 そうした思いを強くされたのは、東日本大震災のときだと伺いました。

清水 1人平均200名の顧客に対して、営業職員は安否の確認に努めました。職員自身も被災しているので、避難所を出てがれきの中を歩きながら、どこにいるかわからないお客様を訪ねて回ったんです。これは、本部や支社長の指示ではありません。一人ひとりの営業職員の「お客様が困っているときこそ、役に立つ」という使命感と献身的な努力がなければ、できなかったことです。

 当時、私は社内に立ち上げた震災復興局の担当でした。同じ会社ながら、頭が下がるくらい感動したのが本音です。残念ながら12名の職員が亡くなったことと合わせて、忘れてはならない日本生命の原点です。

不払い問題からの教訓
「分かりやすさ」を追求

新谷 2005年には、いわゆる「不払い問題」に対応されましたね。生保と損保の業界全体で、支払うべき保険金や給付金について、契約者から請求がないことを理由に払っていないケースがたくさん見つかって、大きな社会問題になりました。

清水 原因は、商品の複雑さ、営業職員の説明の不十分さ、加入後のアフターフォローに力を入れられなかった、などの点にありました。その対応として、商品やサービスの抜本的な見直しに加え、営業職員の活動も見直しました。商品の種類も半分に減らし、加入手続きから支払い事務まで、とにかく「分かりやすさ」を追求したんです。

新谷 その簡素化の流れが、現在の保険「みらいのカタチ」に繋がったわけですか。

「みらいのカタチ」は、自由に選べる14種類の保険で、さまざまな生き方にぴったり寄り添う保障を提供している。人生のイベントから、心配ごとから、自分に合った商品を選択することが可能だ。
「みらいのカタチ」は、自由に選べる14種類の保険で、さまざまな生き方にぴったり寄り添う保障を提供している。人生のイベントから、心配ごとから、自分に合った商品を選択することが可能だ。

清水 はい。また、不払い問題以降は営業職員が年1回以上お客様を訪問する「ご契約内容確認活動」をスタートさせました。これはお客様の請求漏れを防ぐだけでなく、ライフイベント等によるお客様の状況変化を迅速にキャッチし、必要な保障を提供し続けるために大変重要な取り組みで、現在も続いています。商品に限らずサービスや活動面でもお客様の立場に立ち、徹底的に寄り添うことに努めています。

新谷 ヘルスケア領域への進出も、新たな取り組みです。

清水 病気になった際の「リスクに備える」保険に加えて、「リスクそのものを減らす」のがヘルスケアサービスです。元気な方から病気になってしまった方まで、一貫して支援できます。第一弾として「糖尿病予防プログラム」を始めましたが、今後は疾病の種類を増やしていきたいと考えています。

「理屈と情熱」で論理的な経営を目指す

新谷 ところで清水社長は、京都大学理学部で数学を専攻されました。経営者としては、異色の学歴ですね。

清水 研究者になりたかったんですが、大学院の試験に落ちました(笑)。

新谷 「アクチュアリー」という珍しい資格もおもちです。

清水 日本語で言うと「保険数理士」です。将来の死亡率や事故の発生率などの統計データを分析して、適正な保険料や支払いのための積立額について数量的な答えを出したり、商品開発をする仕事です。

新谷 全国で1900人ほどしかいないそうですが、入社3年目で試験に合格されて。

清水 アクチュアリーの資格取得を前提に採用されたものですから、どうせなら早めに取ってしまおうと、猛勉強しました。やらなきゃいけないことはさっさと終わらせるに限る、という性格なんです。

新谷 座右の銘は、「理屈と情熱」。

清水 理不尽だと思ったら、居ても立っても居られない性格で、すぐ行動に移す面はあります。社長になってから抑えていますけど(笑)。

新谷 ご専門が数学だから、曖昧さが許せないとか。

清水 私、経営は論理だと思っていましてね。それと「美しい」という言葉が好きなんです。論理が通らないものに正しさはないし、経営という次元で見れば美しくない。論理に飛躍があれば、どこかで誤魔化さなければいけなくなります。

新谷 まさに数学的ですね。

清水 経営判断には、最後は直感的な部分もありますけど、それでも直感を裏打ちするような論理がついてこなければいけません。

新谷 社長に就任されたのは、2018年です。部下との接し方では、どんなことを心がけていますか。

清水 任せる部分とうるさく言う部分のバランスがわかりやすい上司であることを、意識してきました。だから思っていることははっきり言いますし、部下が思っていることは聞きます。

日本生命の考えるみらいのカタチとは

新谷 日本生命の「みらいのカタチ」は、どう見通していますか。

清水 保障が必要な方に対してしっかりと保障責任を果たし、お客様に「安心・安全」をお届けするという使命は今後も変わることはありません。そのために、お客様本位で長く活躍できる職員の育成に一層力をいれています。人の力とデジタルの融合で、お客様のニーズや不安をタイムリーに捉え、お客様一人ひとりに寄り添ってまいりたいと思います。

新谷 日本生命は、約76兆円の総資産をもつ国内最大規模の機関投資家でもあります。その役割については、どうお考えですか。

清水 日本の産業と経済の発展に貢献するという目的の下に、環境・社会・ガバナンスに配慮した資産運用である「ESG投融資」を推進しています。特に気候変動問題への取り組みは「サステナビリティ重要課題」と捉えており、今後も投資先企業とは対話を通じてカーボンニュートラルに向けた取組みの後押しをしていきたいと考えています。また地方振興や高齢者支援にも力を入れていきたいと思っています。全国に5万名の営業職員がいますので、自治体との包括的連携協定も活かして貢献してまいります。

 そして今後も、社会とお客様の安心・安全をサポートして、今日よりもっといい「未来」を創っていきたいですね。

#11を読む JR東日本社長インタビュー 開業150年 鉄道、生活、ITで成長を目指す


Text: Kenichiro Ishii
Photograph: Miki Fukano