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その5年後、佐藤さんは「効率性」を求めて結婚相談所に入会していたのですが、収入など外面ばかり注目され、中身を見てもらえない婚活に疲弊している様子でした。そこに、部長昇進間近と目されていた時期に、うつ病で休職していた部下から「佐藤さんに過重労働を強いられていた」と人事部に訴えられ、譴責(けんせき)の懲戒処分を受けたことが追い打ちをかけます。

佐藤さんは「花形部署を離れて、出世も見込めないなんて、女性にモテるわけがない」と心をひどく痛めていました。

20年前は笑いに変えられる明るさがまだあった

ポストが削減されている現在、実際には「高スペック男性」は部長まで昇進できればまだいいほうですが、彼らの中には社長は無理でも、せめて役員にはならないとダメという認識の人も少なくない。だから、高スペックは、どこかで終わってしまう期限付きのものなんですね。高スペックの期限に気付いていない男性たちを前にしても、取材者という立場上、何も言えないことをいつももどかしく思っています。

15年前に『男はつらいらしい』を刊行したときは、取材相手の男性に怒られながら取材する大変さがあった一方で、文字にしてみると、男性からもクスっと笑ってもらえるような明るさがまだありました。

ですが、現在は最悪、男性が孤独死する状況が明日にでも待ち受けている状況なわけです。男性も年齢が上がれば上がるほどマッチングの可能性が低くなってしまいますし、自信もやる気もなくなり、最終的には孤独感に苛まれながら、周囲から孤立してしまいかねない深刻さをとても危惧しています。それでも、次にお会いしてインタビューするときには状況が良くなっているかもしれないと願いながら、取材を継続しています。

奥田 祥子(おくだ・しょうこ)
近畿大学 教授
京都生まれ。1994年、米・ニューヨーク大学文理大学院修士課程修了後、新聞社入社。ジャーナリスト。博士(政策・メディア)。日本文藝家協会会員。専門はジェンダー論、労働・福祉政策、メディア論。新聞記者時代から独自に取材、調査研究を始め、2017年から現職。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学。著書に『捨てられる男たち』(SBクリエイティブ)『社会的うつ うつ病休職者はなぜ増加しているのか』(晃洋書房)、『「女性活躍」に翻弄される人びと』(光文社)などがある。

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