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「合計で13万4600円です」費用は全額遺族が負担 神奈川県の施設で“異状死”となった場合の不条理なシステム

source : 提携メディア

genre : 社会, 経済

医療機関以外、もしくは、かかりつけ医がいないまま自宅で死亡すると「異状死」として、医師の検案を受けることになる。両親がいずれも異状死となった、ノンフィクション作家の平野久美子さんは「神奈川県の施設で母が亡くなったときには遺体の検案料、搬送料、すべてが遺族負担だった。これは東京都の自宅で亡くなった父のときにはなかった。神奈川県の仕組みはおかしい」という――。

※本稿は、平野久美子『異状死』(小学館)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/oasis2me ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me

母が神奈川県の施設で「異状死」した

母が亡くなった翌日の2020年3月10日、その日の午前9時前に、警察から紹介された葬儀社が検案を終えて棺に納まった母を自宅まで送り届けてくれた。

戻ってくるのは午後になるだろうと思っていたので、まだ棺をどこに安置するのかも決めていなかった。とりあえずというわけにもいかないけれど、リビングルームの奥に広がる庭に母の好きな沈丁花が咲いていたので、窓辺の近くに棺を安置してもらい、その周囲に献花や榊を置く台を配置することにした。換気のために窓を開けると、ふうわりと沈丁花の香りが部屋に入ってきたので、棺のふたを開けて母に春の気配を感じてもらった。

それにしても早い帰宅だった。

横浜市内にある検案施設から我が家までは約35キロメートル、往復で70キロメートルほどの距離になる。検案を終えた母をいったん瀬谷区の葬儀社まで連れ帰り、そこで身仕舞いを整えて納棺。途中、高速道路を一部使ったとしても嘱託医のもとを午前8時より前には出発しないと9時前に我が家へは戻ってこられない。よっぽど朝早くに検案を済ませたに違いない。検案は、警察や救急医からの第一次情報をもとにしての外見確認だけだから短時間で終わったはずである。

「早速ですが合計で13万4600円です」

葬儀社からやってきた二人の男性スタッフは、棺を指定した位置に置くと、「早速ですが」と切り出して、目の前に何枚かの領収書と請求書を並べた。