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長男が人民解放軍式キャンプ参加、ファーウェイが制作費提供…「日中の架け橋」映像監督の功罪

長男が人民解放軍式キャンプ参加、ファーウェイが制作費提供…「日中の架け橋」映像監督の功罪

2022/10/07
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 竹内亮という人物をご存知だろうか? 2020年初頭から、中国のコロナ対策の「成功」を伝える映像を何本も制作・発表している、江蘇省南京市在住の日本人映像監督だ。現地では「中国に住んでいる最も有名な日本人」として広く知られ、若者を中心に人気を集めている。日本国内でも、今年9月29日に毎日新聞が日中国交50年の特集記事で彼を大きく取り上げるなど、日中交流の話題のなかでは一定の知名度がある。

「日本では中国の悪いことを伝える報道が多い。でも、亮叔(liàng shū:竹内)の動画は、中国のいい部分をたくさん伝えているんです」

 今年9月17日、日本に滞在中の竹内のファンイベントに参加した25歳の中国人女性はそう話した。有明で開かれたこのイベントは、竹内と中国人配偶者が共同経営する映像制作会社「和之夢」の主催。会場は250人の参加者で満員となる盛況だった。

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和之夢のファンイベントに登壇する竹内。チケットが人民元建てのウェブ決済(アリペイとWeChatペイ)で主に販売されたこともあり、日本国内での開催とはいえ来場者の9割は中国人だった。

 壇上の竹内はピンク色のシャツに白のハーフパンツ、トレードマークの天然パーマの頭にベースボールキャップを逆向きにかぶったラフな格好だ。中国語は語彙力こそ比較的弱いものの、日本人としては相当に流暢なほうである。

 いっぽう、会場では妻の趙萍のほか、イベント運営を手伝っている現在中学2年生の長男の姿もみられた。そして、私はこの少年の顔に見覚えがあった──。

軍事訓練で息子を矯正せよ

 理由は2020年7月20日、竹内が約510万人のフォロワーを持つ中国のSNS「微博」に、長男についての投稿をおこなったからだ(彼は過去にもしばしば、微博や動画作品で家族を実名・顔出しで紹介している)。このときの投稿の文面は以下の通りである。

 “みなさん、お聞きしたいです、お勧めのサマーキャンプはありませんか?

 

 息子は今日から夏休みなのですが、彼を鍛えるために本気でサマーキャンプに参加させたいと思います。彼の自分自身を律する能力や生活力はまったく大変ひどいものです。なので軍事訓練のような?厳しいサマーキャンプを経験させ、苦しい思いや忍耐や生活力を鍛えたいと思っています。もしみなさんご存知なら、私にお勧めを教えてください。

 

 地域:南京もしくは江蘇省を希望”

竹内が微博におこなった投稿(本来の写真は目線なし)。中国でこうした行為は比較的珍しくないとはいえ、510万人に向けて実名・顔出しで「彼の自分自身を律する能力や生活力はまったく大変ひどい」と親に書き込まれる小学6年生(当時)の人生は軍事訓練よりもしんどい気がする。

「サマーキャンプ(夏令営)」については説明が必要だろう。中国は日本よりも庶民と軍隊の距離が近いこともあり、近年、人民解放軍のOBが主催する子ども向けの軍事訓練キャンプが人気である。