『サザエさん』のアナゴ役、『ドラゴンボールZ』のセル役、『銀河英雄伝説』のオスカー・フォン・ロイエンタール役などで知られる声優・若本規夫さん。

 70歳を過ぎても第一線で活躍する大ベテランは、現在の声優業界をどう見て、何に期待をしているのか。また、77歳を迎えたばかりの若本さんの「今後の目標」についても聞いた。(全3回の3回目/#1#2を読む)

今の声優業界を、若本規夫さんはどう見るのか?(写真:シグマ・セブン提供)

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「僕たちは、海外の役者を声で超えたいんだよ」

――今の声優界で、注目している方はいますか?

若本 声優ですか? 逆に聞きたい、誰か活きのいい若手いますか? 

 最近の声優は、きれいにしゃべるんだけどね、変化がないんだよ。誰が何の役をやってるのかわかんない。多少しゃべり口だけが変わるぐらいで、声も同じだし。

 そのシーンで、その役が何をやっているのかわかりにくい。シーンをシーンとして成り立たせることができないんだよね。フレーズをより日常化させて、リアリティを表現できるか。これが声優なんだ……。

――なるほど。

若本 声優はね、素質だけじゃ続かないんだよ。10年持たないよ。素質があることは前提で、その上に鍛錬が折り重ならないと続いていかない。次から次へと新しい人が出てくるからね。

 思うに、今の声優は、話し方がパターン化している。昔は、「この役と言えばあの人」というのがあった。たとえば、僕が入ったころなんか、西部劇の娼婦役の吹き替えの人なんか、うまかったね。華があった……。

 今の吹き替えはもう、みんな同じ声に聴こえてきて、つまんないんだよ、見てても。海外の役者に負けてるから。海外の役者を「声で」超えていかなきゃ……。

――そういう説得力には、先ほど(#2)の「土のにおい」が重要ですか。

若本 重要ですよ。聞こえてくる声のパフォーマンスがアルコール消毒されたような感じでね。ドロドロにのたうち回ってるような強烈な体臭というか、人間の息吹が感じられない。

 例えば、かっこいい役でもね、裏ではいろんなダーティなことをやってるわけじゃない。そのダーティな面をバックに背負って表現しているかどうかで、セリフが全然違って聞こえてくる。

 それと、これだけははっきり言っておきたいんだ。素質のない人はこの世界に入ってきちゃ苦労する。2年なら2年と期間を限定して、ダメならスッパリ転身して欲しいんだけどね。

――早い身の転換が必要だと。

若本 ただ、なかなか諦めきれないんだよね。続けていれば、なんとかなるんじゃないかと思う世界なんだ。

 僕が見ている範囲では、底を打つような鍛錬をしている声優は少ないね。若いときはかっこよくしゃべればそれなりに評価してくれる。でも、さっき言ったように、かっこいいキャラクターだって、日常生活を送れば、恥ずかしいこともする。そういうものを背負ってかっこいいセリフを言うのと、かっこいいだけのセリフを言うのとでは全然厚さが違う。人生の裏を背負っている人は、セリフが違う。