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戦国時代が終わって「用済みの人間」になったのに…豊臣方の勇将・立花宗茂は、なぜ江戸幕府に重用されたのか?

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genre : ライフ, 歴史, 働き方

「定年後の人生」にはどう向き合えばいいのか。今年63歳で大手出版社を退職し、作家になった羽鳥好之さんは、戦国時代の勇将・立花宗茂の晩年にヒントを求めた。関ケ原で徳川家に敵対した大名のうち、旧領を回復したのは立花家だけ。「西国無双」と称賛された宗茂は、なぜ平和な時代にも重用されたのか。羽鳥さんが歴史小説『尚、赫々たれ 立花宗茂残照』で描いた宗茂の秘密とは――。

写真=iStock.com/Josiah S ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Josiah S

「僕はもうこの会社で用済みの人なんだ」

人生が長くなり、社会人生活に一区切りをつけた後の時間をどう充実させてゆくか、多くの人たちの切なる関心事であり、重大なる課題です。私自身、本年、63歳で出版社を退社したものの、残る人生にどう向き合ってゆくのか、戸惑いの日々でした。

正直、もう1年で任期が終わるとなった時には、自分でも驚くほどにうろたえ、あてもなく都内をうろついて、気持ちの整理をつけようともがいていました。当然、予測されたことなのに、残りが1年になるまでこの問題と真剣に向き合うことがなかった。

いや、避けてきただけなのかもしれません。ああ、そうなか、僕はもうこの会社では用済みの人なんだ、この実感は相当にショックキングなものでした。

そうか、ならば、この思いを小説にしてみたらどうだろうか、そう思ったのは、いいかげん都内の散歩にも飽きたころでした。

そうした先行作品がないわけではないことは知っていましたが、何か、これまでになかったアプローチができるならば、読んでくれる人がいるかもしれない、いや、読んでもらえるようなものができなかったとして、さして支障があるわけでもなし、何を恐れることがあるだろうか、そんな思いがふつふつと沸き上がりました。

幸い、コロナ禍で友人知人たちと過ごす席もなくなり、夜、時間はたっぷりとあります。もともと小説の編集の仕事が長かったこともあって、見よう見真似、ともかくは書き出してみようと腹を決めました。