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戦国屈指の勇将・立花宗茂に注目したワケ

そもそも歴史好きだった私は、大好きだった戦国武将のひとり、九州の立花宗茂が晩年、江戸幕府から厚遇を受けたことに興味を抱いていました。

戦場の勇猛な宗茂を描く小説はあっても、その晩年を描いたものは読んだことがない、ならば、60代も半ばに至った戦国屈指の勇将が、戦いのない世をどんな思いで生きたのか、それを描いてみるのが、いまの自分に一番ふさわしいテーマには違いない、そう考えたのでした。

主人公の立花宗茂は、豊臣秀吉の九州征伐や朝鮮出兵で奮戦し、“西国無双”と称賛された名将です。

しかし、天下分け目の決戦、関ケ原の戦いでは、秀吉への恩義から劣勢を承知で西軍に合流します。しかし、宗茂が別の戦場に派遣されている折、決戦はわずか一日で徳川方の勝利に終わり、敗将となって改易処分となりました。

ここまでは戦国ファンにはよく知られたこと。実は、その後、浪人生活の辛酸をなめたものの、家康、秀忠からその高い能力を惜しまれて、かつての領地、筑後柳川藩の大名に返り咲きます。関ケ原で徳川家に敵対した大名で、旧領を回復したのは立花家だけでした。

三代将軍・家光からの突然の呼び出し

平和の世に、二代将軍秀忠の「御伽衆」として側近く仕えた宗茂は、60代も半ばを過ぎた老境に至り、三代家光に一層、重きを置かれます。

あまり知られてはいませんが、茶の湯や連歌、能や蹴鞠といった芸事に通じたインテリでもあったので、江戸のサロンでは幅広い交際を結んでもいます。晩年には「御伽衆随一」と称され、諸大名から大いに羨まれたことが幕府正史に記されています。

さて、物語は、二代秀忠の病いが重篤になり、新たな時代が幕を開けようとする寛永8年から始まります。親政に気持ちを昂らせる三代家光は、神君家康がいかにして関ケ原を勝ち抜いたのか、老将宗茂を召して、その考えを開陳するよう命じます。

宗茂にとって、これはかなり剣呑な諮問でした。なぜ、いま関ケ原なのか、その意図がはっきりしないからです。