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genre : ライフ, 歴史, 働き方

ここまでが前半部です。後半からが、今回の主要なテーマ、立花宗茂の晩年の境地に迫ることになります。

ストーリーは、家光の弟である駿河大納言忠長を巡る騒動から、熊本の加藤家、そう、あの加藤清正の藩の改易へと話が進みます。

やはり、代替わりの改易騒動は勃発しました。幕府のさらなる安定に向けて、大名統制を強化しようとする家光に対して、宗茂は懸念を深めてゆきます。

もはや「残躯」となった自分にできることがあるとすれば、それは若き将軍家が「大樹」(江戸時代はこの言葉が将軍を指しました)となる手助けをすることではないか。それが、将軍家の厚遇に報いる道ではないのか。

宗茂は腹を切る覚悟で、家光との面談を求めます。

島津家久ら、親しい友人たちの制止も振り切り、宗茂が江戸城本丸御殿の奥深く、家光の御座所で決死の諌言を試みる場面は、我ながら、迫力満点の描写ができたように思います。

残りの人生に必要なものは何か

描き終えて思うことは、晩年の人生を彩るのは、友人知人の存在、それまで生きてきた自分の道筋を知ってくれている存在との、語らいの時間ではないでしょうか。それが、ともすれば安易に流れてゆきがちな晩年の時間を、正してくれるように思います。

最後に。立花宗茂は戦場での生活が長かったゆえか、愛する正室との間に良好な関係を築くことができず、その若すぎる死にも立ち会うことができませんでした。

それを生涯の悔いとしていた宗茂の晩年の恋、徳川きっての姫君への密かな恋慕を描くことにも、丁寧に筆を重ねました。

そこにも宗茂の人生の足跡、誰にも語ることのできなかった深い思いが隠されていると思ったからです。お楽しみいただけましたら幸いです。

羽鳥 好之(はとり・よしゆき)
作家
1959年生まれ。群馬県出身。早稲田大学第一文学部卒。1984年文藝春秋に入社し、「オール讀物」編集長、文藝書籍部長、文藝局長などを歴任。2022年文藝春秋退社後、『尚、赫々たれ 立花宗茂残照』(早川書房)で作家デビュー。原型となる作品が2021年、日経小説大賞最終候補作となる。

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