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【スーパードクター2023】心臓手術も甲状腺手術も、ロボットの時代へ…世界最高水準の技術を誇る病院の最新手術「ネオコード」とは?

ニューハート・ワタナベ国際病院

2022/11/28

定評ある低侵襲小切開手術やロボット手術に加え、最新の心拍動下僧帽弁形成術「NeoChord®(ネオコード)」が登場。カテーテル治療など循環器内科も充実し、チーム・ワタナベは多角的医療で心臓血管疾患を治療する。 

院長
渡邊 剛
わたなべ・ごう/1984年金沢大学医学部卒。独ハノーファー医科大学留学。金沢大学医学部外科第一講座主任教授などを経て2014年にニューハート・ワタナベ国際病院を開設。日本外科学会認定外科専門医、日本胸部外科学会認定心臓血管外科専門医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本ロボット外科学会理事長

  本院の使命は、患者さまに世界最高水準の心臓手術を安全に提供することです。指標の1つが手術成功率99・6%の達成(日本と米国の平均死亡率は2.5%)。患者さまにはもれなく社会復帰を果たし、健常時と同等の生活を営んでいただきたい。そのために術式に創意を凝らし、低侵襲性を徹底的に追究してきました。

 心臓手術の基本は胸骨を縦に20cmほど切り下げる正中切開ですが、出血、疼痛が強く回復も遅い。肋骨間を5~7cm切開する小切開手術の独自開発は必須です。弁形成や弁置換ではMICS(小切開心臓手術)、冠動脈疾患はMIDCAB(小切開冠動脈バイパス手術)として定着させ、症例に応じ内視鏡を組合わせるハイブリッドも選択しています。

 ロボット(ダビンチ)支援下手術も可能性を広げます。本院は「キーホール手術」を日本で唯一採用。これまで1cm程度の傷4つで手術を行っていたが、2022年9月から傷を3つに減らすことに成功。2018年に弁形成術が保険収載されて症例が飛躍的に増えており、心臓手術数は世界No.1(2019~2021各年実績)となりました。

胸部に1円玉大の孔を3カ所開けるだけですべての操作を行う「キーホール手術」
胸部に1円玉大の孔を3カ所開けるだけですべての操作を行う「キーホール手術」

【動画】手術支援ロボット・ダビンチによる僧帽弁形成術【キーホール手術】ノーカット版

 

 僧帽弁形成術では弁、弁輪、腱索の形成に加え、併発する不整脈治療メイズ手術(クライオアブレーション)、脳梗塞の原因となる血栓の温床=左心耳の切除までを一貫して施術。

 自己心膜を利用した大動脈弁形成術(弁膜新生手術=Ozaki手術)も近い将来全工程をロボット手術に移行する予定。これは採取した自身の心膜で弁を作成・移植するもので、弁の機能は本来の大動脈弁に相当。耐久性も人工弁と遜色ありません。

 今後は循環器内科領域のカテーテル治療もより充実させ、ハートチーム医療を推進。8名の心臓血管外科医をコアに、内科医、麻酔医、看護師、薬剤師、臨床工学技士が総力をあげ、心臓・大動脈疾患のオーダーメイド治療を提供する所存です。

甲状腺がんを腋窩アプローチのロボット支援下手術で根治

副院長 兼 内分泌・呼吸器外科部長
石川 紀彦
いしかわ・のりひこ/1993年金沢大学医学部卒業

  甲状腺がんの約95%は進行の緩やかなおとなしいがんで、適切な時期に手術で切除すれば十分根治が見込めます。ただ甲状腺はのどぼとけを取り囲む位置にあるため、横5~10cmの手術痕が首正面に残り、整容面で悩む方が少なくありません。

 私が採用するのは「腋窩アプローチによるロボット(ダビンチ)支援下甲状腺切除術」。腫瘍側の腋の下を3cm切開し、皮下を甲状腺に至るまで剥離。4本のロボットアームを挿入し、腫瘍のある片葉の切除と、所属リンパ節郭清を行います。もう片葉は残すので、甲状腺ホルモンの分泌機能に影響はありません。

首まわりが開いた服でも傷跡が見えない
首まわりが開いた服でも傷跡が見えない

 ダビンチの3Dカメラは解像度が高い上、アームも操作性に優れ、繊細な切除や縫合に最適。副甲状腺や反回神経など周囲の大事な組織を温存しながら、病変部を確実に摘除することが可能です。

 国内でこの手術を常時受け入れているのは本院のみ。自費診療※1です。

胸部大動脈瘤のオープン・ステントグラフト手術

副院長 兼 心臓血管外科部長
富田 重之
とみた・しげゆき/1992年金沢大学医学部卒業

 「大動脈瘤」は、動脈硬化などで脆弱化した大動脈が瘤状に膨らむ疾患。血流の刺激で次第に大きくなり、破裂すれば命にかかわります。

 治療法は、手術で病変のある血管を取り換える「人工血管置換術」と、血管内治療の「ステントグラフト(金網の筒)内挿術」の2つ。後者は瘤の内側に、鼠蹊部からカテーテルで送り込んだステントグラフトで“トンネル”を作り、血管を補強するものです。

 大動脈は心臓からいったん上に向い(上行大動脈)、Uターンして(弓部大動脈)下方へ向かいますが(下行大動脈)、心臓から横隔膜までを「胸部大動脈」、横隔膜から下は「腹部大動脈」と呼びます。上行及び弓部大動脈には脳など重要な臓器に血液を運ぶ分枝血管があるため、治療は基本的に手術。下行大動脈では血管内治療を選択するのが一般的です。

 本院では、胸部大動脈の広範囲に複数の瘤を発現した難治症例に対し、先端治療の「オープンステントグラフト」を採用。開胸し人工心肺で血液循環を確保したのち、上行から弓部大動脈を、分枝血管付の人工血管に置き換えます。続いて下行大動脈には開胸部から直接ステントグラフトを挿入。人工血管と吻合し、胸部大動脈の機能を回復させます。

カルテには一つ一つ富田医師によるスケッチがある。下記はオープンステントグラフト
カルテには一つ一つ富田医師によるスケッチがある。下記はオープンステントグラフト

 一方、心臓につながる大動脈基部に瘤ができ、大動脈弁輪拡張症と大動脈弁閉鎖不全症を併発したケースには、極めて高度な人工血管置換術を提供。人工弁のついた特殊な人工血管を用いる「ベントール手術」、または患者本人の弁を温存し(必要に応じて弁形成)、弁輪と血管を置き換える「ヤクー手術」「デイビッド手術」が症状に応じ選択されます。

 いずれの手術も安全・最適・最速を目指し、出血は僅少。人工心肺下では脳保護のため、普通は28℃まで体温を下げますが、当院では32℃で可能に。低侵襲を尽くし、患者さまの確かな社会復帰を実現します。

僧帽弁閉鎖不全症の最新手術「NeoChord®(ネオコード)」

心臓血管外科 副部長
瀬口 龍太
せぐち・りゅうた/2009年金沢大学医学部卒業

 「ネオコード」は僧帽弁閉鎖不全症に特化した、画期的な低侵襲手術です。人工心肺不要。心臓を動かしたまま、5~7cmの小切開で行うことができ、国内では、現在(2022年8月)本院のみが独立施設として認定されており、患者さまに提供しています。

 僧帽弁は左心房と左心室の間にある弁です。肺で酸素を受け取った動脈血は左心房から左心室を経て全身へと送り出されますから、僧帽弁が閉鎖不全を起こすと、動脈血の一部が左心房へ逆流。血流が低下する上、肺と心臓壁に負担がかかって息切れや呼吸困難が発現し、心臓も拡大。心不全の要因ともなります。

 僧帽弁閉鎖不全症を引き起こす原因は(1)弁の開閉に働く紐状の「腱索」が緩んだり一部が切れたりしている、(2)僧帽弁が裂けたり穴があいている、(3)弁の周りの弁輪が拡張している、の3つがあげられます。

 ネオコードの治療対象は(1)。拍動に応じ弁がきちんと閉じるよう、人工腱索を移植・再建する手術です。まず左胸を小切開し、心尖部より器具(ネオコード)を心臓内部に挿入。経食道エコーで観察しながら病変を起こした僧帽弁を捉え、ゴアテックスの人工腱索を複数本植込みます。器具を抜去後、心尖部の外側で腱索の長さを調整し固定。心拍動下手術なので、弁が適切に開閉し、逆流が制御されているかリアルタイムで確認できるのが大きな利点です。

NeoChord®のイメージ
NeoChord®のイメージ

 人工心肺は優れた装置ですが、腎臓に負担をかける、体外循環移行時に大動脈プラーク(コレステロールの塊)が剥離し脳梗塞を誘発する例があるなど、リスクはゼロではありません。

 当院は2022年5月にネオコード導入後、3ヵ月で8例を成功させました。手術時間は2時間です。早期退院可。超高齢者や癒着がネックとなる再手術患者にも適応でき、僧帽弁形成術の新たな福音になると期待しています。なお、ネオコードは現在自費診療※2です。

【参考】NeoChord®を使った僧帽弁手術。人工心肺を使わないため、超高齢者や再弁形成術にも適応。

※1:120万円(税別)
※2:料金設定中のためお問い合わせください。

INFORMATION

医療法人社団 東京医心会

東京都杉並区浜田山3-19-11
TEL 03-3311-1119
https://newheart.jp

この記事の掲載号

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