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「最終議論で『断固セクハラは残すから』と…」 『エルピス』脚本家・渡辺あやが語る、“不都合な欲望”を描くわけ

脚本家・渡辺あやさんインタビュー #1

2022/10/31
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「寡作の鬼才」――そんな形容が似合う書き手である。映画『ジョゼと虎と魚たち』、連続テレビ小説『カーネーション』(NHK)などの脚本で知られ、年産の「量」こそ少ないが、確実に「質」の高い作品を世に出し続ける渡辺あや。

 彼女が初めて手がける民放の連続ドラマ『エルピス —希望、あるいは災い—』(カンテレ/フジテレビ)が10月24日から放送を開始し、大きな話題を呼んでいる。紆余曲折を経て実現にこぎ着けた本作にこめた思いを訊いた。(全2回の1回目/続きを読む

©カンテレ/フジテレビ

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 企画のはじまりから放送に至るまで、6年の歳月を費やしたというこのドラマは、スキャンダルが原因で深夜の低視聴率番組に“飛ばされた”元看板女子アナ・浅川恵那(長澤まさみ)が、若手ディレクター・岸本拓朗(眞栄田郷敦)とともに冤罪事件の真相を解明しながら、自分自身の再生を果たしていく姿を描く。

 第1話で恵那が言った「私はもう、のみ込めない」という台詞が、昨今のこの国の状況に対する脚本家・渡辺あやと、二人三脚で企画を実現させた本作の制作統括・佐野亜裕美プロデューサーの、静かな叫びにも聞こえてくる。

6年越しで実現したドラマ

――第1話を拝見しました。主人公・恵那の苦しみがひしひしと迫ってきながら、彼女の中で何かがはじけて、何かが始まろうとするラストシーンにゾクゾクして、瞳孔が開いていくような感覚がありました。すごく面白かったです。

渡辺あや(以下、渡辺) 本当ですか? (同席した佐野亜裕美プロデューサーに向かって)よかったね! 私はやっぱり作り手としてフラットに見られないんですよね。「もうちょっとこうすればよかった」と思うことばかりで。現場で書き足してくださった台詞のほうが軒並みよく見えてしまう。

©文藝春秋(撮影:山元茂樹)

――映画とNHKのドラマのイメージが強い渡辺さんが「民放で書く」という第一報が流れたときは驚きました。

渡辺 誤解されがちなんですが、私、「民放では書きませんから」とか言ったことはないんですよ。他にも民放のプロデューサーの方が何人か来てくださったのですが、なかなか実現に至らなかった。佐野さんと初めて成功したというだけのことなんです。

――6年越しで実現した作品だとか。

渡辺 そうなんです。知人の紹介で私が佐野さんと初めてお会いしたのが2016年でした。事前に、本作の監督である大根仁さんや、フジテレビの村瀬健プロデューサーから「佐野ちゃんはいいぞ、すごいぞ」みたいな前評判を聞いていたので、さぞや自信ありげな女性なのかなと想像していたら、いつでも反省してる。実は今もさっき私から第1話へのダメ出しを受けたばかりで、しょぼくれてます。