2017年夏の甲子園において、PL学園時代の清原和博(元西武ほか)の記録を上回る1大会6本塁打を放ったのが広陵高校(広島)の中村奨成(23)だった。
現在は広島東洋カープに所属する甲子園の元スターが、SNSを通じて知り合った30代の女性を妊娠させたうえ中絶を強要したというスキャンダルが「週刊文春」で報じられた。一報を受けて脳裏に浮かんだのは中村の恩師である広陵の中井哲之監督(60)のことだった。
「中村の行動が軽率だったことは間違いない」
1985年から38年にわたって広陵で指導を続ける中井監督は、春のセンバツで2度の全国制覇、夏の甲子園でも2度の準優勝経験を持つ名将中の名将だ。そして同時に、礼儀や規律を重んじる「昭和気質」の監督としても有名だ。親に対して感謝の気持ちを持たない生徒や、生活態度が悪い生徒はどれほど能力が高くても試合では起用しないと公言している。
野球部員が入る寮での生活も厳しく、今でも携帯電話は禁止。春夏の甲子園大会はもちろん、国体などでも青光りした坊主頭が揃う。野球人口の減少を受けて髪型を自由にしたり自主性を尊重する学校も増える高校野球界だが、広陵にその変化の波は届かない。その中心にいるのが、厳格ながら父性に溢れる中井監督だ。
その中井監督の教えを裏切るような、中村のスキャンダル。10月28日の金曜日、広陵は来春の選抜出場を目指して秋季中国大会1回戦に臨んでいた。米子東(鳥取)に勝利した試合後、囲み取材を終えた中井監督に声をかけた。
「もちろん、怒りはあります。ただ僕はアマチュアの監督で、彼はプロ野球選手。この場で話題にすることではないでしょう。僕は何も知らないし記事も読んでいませんが、本人の言い分もあるだろうし、相手の方の言い分もあるでしょう。ただ、中村の行動が軽率だったことは間違いないと思います。自分がやったことは自分で(責任を取らなければならない)……」