近年、話題になることが増えた発達障害(特性)。だが、実際は診断がつかない場合も多く、子どもと親は不安や悩みを抱える。子どもの発達特性を受け止め、専門職のチームでサポートする「おかざきよろず心のクリニック」の取り組みを聞いた。

院長
岩崎寿史
Hisashi Iwasaki
1986年東京大学法学部第二類(公法コース)卒業。2003年名古屋大学医学部医学科卒業。2010年より特定医療法人共和会共和病院医局長を務め、2016年「おかざきよろず心のクリニック」開院。
発達特性を持つ子と親をチーム医療で支援する
「おかざきよろず心のクリニック」は、児童精神科・心療内科・精神科を専門としており、岩崎寿史院長は、3歳から102歳まで、幅広い年代の患者を診察してきた。ライフステージごとに抱える心の病はさまざまで、発達特性、統合失調症、躁うつ病など、院長が専門とする疾患は30近くにもなる。
「子ども、親、祖父母全年齢層のかかりつけ医になりたい思いと、様々な相談やあらゆる精神症状に対応したい思いを込めて、院名に『よろず』を入れました」。
岩崎院長は、「発達障害と言われる症状があっても、中度から軽度の人は問題なく日常生活を送ることができます。そのためには、周囲が、その子の発達特性を個性として捉え、サポートしていけるかが重要です。当院は、堀倫之副院長をはじめ、看護師、心理士、精神保健福祉士、作業療法士、言語聴覚士が在籍しており、チーム医療を実践しています。医師の診察、カウンセリングのほか、小中高生を対象としたデイケア・ナイトケアの実施、プレイセラピーの導入、言語訓練・作業訓練、訪問看護など、専門性の高いスタッフたちが、さまざまな面からアプローチします」と語る。

同クリニックを受診する患者は小学生が最も多く、中学生、未就学児、高校生、成人、と続く。発達特性を専門とした病院を求めて、岡崎市内外、さらには県外からも患者が訪ねてくる。
治療にあたっては、カウンセラーが丁寧にカウンセリングし、岩崎院長の診断のもと、治療計画を立てる。親や周囲が接し方を変えるだけでいい子への投薬は不要。薬を処方する場合でも、近年は副作用の少ない薬が開発されており、薬が成長を助け、行動変容し、半年で処方を終える子も多い。入院や身体疾患の治療が必要と院長が判断した場合は、地域の病院を紹介する。

デイケアの出席は学校の出席に、個性・特技を生かし、将来へつなげる
クリニックの2階には、小学生、中学生、高校生を主な対象とした児童思春期デイケア・ナイトケアがある。ここでは発達特性を持つ子どもたちが、スタッフや仲間と一緒に勉強やレクリエーション、作業活動を通じてリハビリテーションを行う。学校や市の教育委員会と連携し、デイケアの出席は学校の出席となる。利用の際に保険が適用されることもあわせ、同院の取り組みは全国でもまれ。医師、看護師、心理士、作業療法士等のスタッフの他、近隣大学の学生がアルバイトとしてサポートし、医療、教育、デザイン分野から海外留学まで多様な進路を実現している。「デイケア、ナイトケアはほめるのがモットーです。ほめられれば自信がつき愛着を覚える。周囲や親に理解されず、否定的な言葉に自信をなくす子を救いたい。発達特性は自己理解を深めれば成長したりコントロールできる時代。自己肯定感を高めて、伸び伸びと生きていってほしい」と岩崎院長は語る。

INFORMATION

児童精神科・心療内科・精神科
おかざきよろず心のクリニック
〒444-0875
愛知県岡崎市竜美西2-1-17
TEL.0564-64-6616
https://okazaki-yorozu-kokoro.com/
