オールドボーイズネットワークに従わない者への、見せしめだった。こうして社内は震え上がる。
「ネットワークのトップの人たちは仕事ができるというより、ネットワークを利用して下の人間にやらせて、手柄を横取りして業績を上げる。慕われているのではなく、恐怖で支配するんです。言うことを聞かないと、好きな部署にいられないぞと」
報告書ビリビリ事件
実は窪田さんも昔、とんでもない目に遭ったことがあった。
「成功したプロジェクトの報告書を作ったのですが、それを見た部長からビリビリに破かれました。課長が、『お前、部長のおかげって書かなかっただろう』って。驚きですよ」
報告書にすら、上司の実績をたたえないといけないという暗黙のルールがあるとは、ネットワークに所属していない以上、わかるはずもない。これも、男のメンツなのか。
「現役時代、何度もいろいろな男性から言われたのが、『俺のメンツを潰したな』という言葉でした。私は順当な出世ではなく成り行きで昇進したので、男のメンツを立てるなどの、オールドボーイズネットワーク的な教育は受けていないわけです。それで地雷を踏むようです」
窪田さんの観察眼によれば、何かを企画した時、オールドボーイズネットワークは仲間を探す。資料を作る能力、プレゼン力があるなど目星をつけた男性社員に、個別に「メシ、行かねえか」とか「酒、飲まねえか」とネットワークに誘いをかける。決して、「お前、仲間に入らないか」とは言葉にしない。
「何となく危険だなと思って去る人もいれば、気がつかないまま仲間になってしまっている人も多いですね。私の部下が違う部署の部長の仕事をしていて、そのことを指摘したら、『いやいや、これはいいんです』と。でも結果、その作業は部長がやったことになって、手柄は他部署の部長のものです」
オールドボーイズネットワークに役立つなら、違う部署の仕事を勤務時間内に行うことも大手を振って許される。こうした暗黙のルールが、社内に張り巡らされていた。