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【スーパードクター2023】子どもから高齢者まで身体にやさしい粒子線治療を実現

兵庫県立粒子線医療センター

2022/11/28

日本で唯一2種類の粒子線治療が可能な兵庫県立粒子線医療センターは、線源を効率的に切り替えることで治療実績9000例以上を誇る。院長の沖本智昭医師に治療の現状や線源の選び方を聞いた。

院長
沖本 智昭
1990年長崎大学医学部卒業。米国テキサス大学留学、北海道がんセンターなどを経て、2014年兵庫県立粒子線医療センターへ。2015年より現職。放射線治療専門医。神戸大学大学院客員教授、大阪大学招聘教授。

長期の副作用を視野に科学的に治療法を選択

 当院は“がん撲滅”を目指して2001年に播磨科学公園都市に誕生した「世界初の2種類の粒子線治療が可能」な医療センターです。20年経った現在も「陽子線」と「重粒子線」どちらの治療もできる医療機関は国内唯一であり、世界でも数施設に限られています。

 一般的なX線が身体を突き抜けて止まらないのに対し、粒子線には一定の深さ(腫瘍の位置)で止まるという性質があり、これが副作用を大きく軽減し、集中性の高い治療を可能にしています。さらに重粒子線には「陽子線より3倍近くがんの殺傷効果が高い」という違いがあります。しかし、どのがんにどの粒子線が適しているかという明確なエビデンスはまだ出ていません。そこで私たちは、腫瘍の大きさと位置から重粒子線と陽子線それぞれで治療計画を立てて比較検討し、より副作用の少ない方法で治療を行っています。先進医療を含め、計14種類のがんで対応が可能です。とくに小児腫瘍は放射線が効きやすく、がんがうまく治っても大人になるにつれてX線が当たった正常臓器の機能が低下し、長生きが難しいことが課題でした。その長期的な副作用を低減できると世界的に認められたのが陽子線です。現在は附属施設の「神戸陽子線センター」が専門的に治療に当たっています。

治療は医師、医学物理士、放射線技師、看護師、薬剤師、メディカルアシスタント等、多くのスタッフに支えられている。
治療は医師、医学物理士、放射線技師、看護師、薬剤師、メディカルアシスタント等、多くのスタッフに支えられている。
附属施設の「神戸陽子線センター」
附属施設の「神戸陽子線センター」

【TOPICS】50床の入院施設を完備 集学的治療も院内で

 当院の特徴は、2種類の粒子線治療が可能なだけではありません。全50床の入院施設を完備し、外科や内科の医師と毎週キャンサーボード(治療方針を決める検討会)を行うことで、遠方の患者さんでも集学的治療を院内で完結できる体制を整えています。
 

週1回実施しているキャンサーボード
週1回実施しているキャンサーボード


 例えば、患者数の多い肝がんには、カテーテル専門の常勤医が動注療法等を行い、粒子線治療との併用療法が可能です。また、近隣のIHI播磨病院の内科医の協力を得て、すべての薬物療法に対応しています。さらに神戸大学肝胆膵外科の医師に週に一度来てもらい、必要に応じて消化管の放射線障害を防ぐ「スペーサー」の埋め込みを治療前に行うことで、安全で確実な粒子線治療を可能にしています。

切らないがん治療?粒子線治療の1日の流れ&施設紹介

 

「根治切除が困難な難治性の肝臓がんと膵臓がんに対する取り組み」
粒子線医療センターだより14号 

INFORMATION

エントランスにつながるモダンな外観
エントランスにつながるモダンな外観

兵庫県立粒子線医療センター

兵庫県たつの市新宮町光都1丁目2-1
TEL  0791-58-0100(代)
https://www.hibmc.shingu.hyogo.jp

この記事の掲載号

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