「富永病院」は脳神経外科を中心に、1970年の開業以来、総合病院として地域医療に貢献してきた。同院の「大西啓靖記念人工関節研究センター」では、2021年10月に手術支援ロボット「CORI(コリ)」を導入。西日本で初めてCORIを用いた人工膝関節手術を実施した。より的確で高い精度の手術が可能となり、患者の術後満足度が向上したことで、導入後の手術件数はおよそ2倍に増えている。
人工股関節置換術は前方系アプローチが基本

右:副センター長 安井 広彦
「大西啓靖記念人工関節研究センター」では、主に股関節や膝関節の人工関節手術に特化した診療を行っている。これまでの累計手術件数は6千件以上にのぼる※。
人工股関節置換術(THA)では、基本的に前方系アプローチ(DAA)、もしくはAMIS(軟部組織の損傷をDAAよりさらに少なくする目的で開発された手術法)で実施している。
大西宏之・同センター長は「股関節手術は、一般的には広い術野で手術できる後方アプローチが主流ですが、当院では前方系アプローチを基本としています。後方アプローチに比べると術野は狭くなりますが、筋腱の損傷なく手術可能なためです。手術は仰臥位で行うためインプラント設置位置の誤差や脱臼のリスクも小さくて済みます。術後の回復が早く、痛みが少ないのもメリットです」と話す。
同センターでは2012年以降、THAを受けた患者の脱臼は現在までなく、正座、しゃがみこみ、自転車などADLの制限は少ない。手術翌日から独歩可能な患者が多いという。
「CORI」導入後、人工膝関節手術件数は約2倍に増加
同院では変形性膝関節症、関節リウマチ、骨壊死などの膝関節疾患の患者に対し、人工膝関節手術に用いる次世代型赤外線誘導式手術支援ロボット「CORI」を2021年10月に導入。同年11月には、CORIを用いたUKA、TKAを西日本で初めて実施した。
CORIは「NAVIO(ナビオ)」の次世代機。コンパクトな大きさになり、骨切除のスピードが約30%向上したことで手術時間の短縮も実現。
「CORIを用いると、骨の掘削誤差を1ミリ、1度以下におさえ、理想的な位置に高い精度でインプラントの設置ができます。また、従来のロボットでは膝関節の進展時と屈曲90度の靭帯バランスだけしかわかりませんでしたが、CORIは中間屈曲位(屈曲30度から60度あたり)の状態も確認できるため、より安定度のある膝関節を目指すことができています」
階段や坂道の上り下りの安定感を確保するため、適応患者は膝の4つ全ての靭帯を温存する方がよい。膝の内外側の軟骨が傷んでいても、十字靭帯が温存できる場合は、靭帯バランスを調整しながらCORIを用いて手術するという。

安井広彦・副センター長も「長期耐用性のあるオーダーメイドの人工膝関節を目指すことができ、術後満足度の高い手術ができています」と話す。
そのため、CORI導入後の手術件数は86件(2021年10月~2022年10月、TKA、UKA)と例年の倍近くまで増えているという。
骨折のリスクを減らすIBBC法
人工関節手術のセメント固定方法として同センターではIBBC法を採用。骨とセメントの間(界面)にアパタイトの顆粒を介在させてセメント固定するためインプラントが緩みにくくなる。これにより骨折リスクが減り、手術直後から良好な結果が得られているという。ほぼ全例で、インプラント固定にこの方法を用いているのも同センターの特長だ。
同院では2022年から膝、股関節の再生医療を開始。適応患者は再生医療を受けることも可能だ。
※(2001年4月~2022年10月)の累計手術件数
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■院長/富永 紳介
■診療科目/脳神経外科、整形外科、神経形成外科、脳神経内科、循環器内科、内科、放射線科、リハビリテーション科
