「兆治に最後に会ったのはもう何カ月も前です。会食の場でみんなで仲良く食事をして、いつもの優しい兆治でしたよ。9月に羽田空港で女性を押したとかで逮捕されたのは信じられない思いでした。沢村賞の選考委員を辞退すると聞いて電話したのですが本人が出ることはありませんでした。留守電も残したのですが、返事もなく……。相当落ち込んでいたんだろうと思います。今回のことは本当に悔しくて言葉が出てきません」
こう語るのは元プロ野球選手で村田兆治さん(享年72)とロッテ時代のチームメイトで、引退後も40年以上の付き合いがあった張本勲さん(82)だ。
「日本は大事な人を亡くしたんだな」
11月11日未明、東京都世田谷区にある元ロッテ投手の村田兆治さんの自宅から火の手が上がった。木造2階建て住宅の2階部分が激しく燃えているのを近隣住民が通報し、駆けつけた消防隊により火は午前6時ころに消し止められた。村田さんは焼けた住宅の中から救助されたが、搬送先の病院で間もなく死亡が確認された。
火事の現場となったのは小田急成城学園前駅から1.4キロほど離れた閑静な住宅街。燃焼が激しかったと思われる2階部分は黒く焼け焦げ、鎮火から6時間以上経った昼の12時過ぎになっても周囲には焦げ臭いにおいが漂っていた。
伝説の野球選手の突然すぎる訃報に全国の野球ファンが驚きと悲しみに包まれている――。
「兆治とは同じ広島県出身ということもあって弟のようにかわいがっていました。ちょっと子どもっぽいところもありましたが、根はまじめでいい男でしたよ。引退後も一緒に全国で野球教室を開いたりしてね。それはもう熱心に小中学生に球の握り方から投げ方といった基本的なことまで教えていたのが印象に残っています。訃報を受けて、日本は大事な人を亡くしたんだな、こんなことが起こって良いのかと信じられない気持ちです」
張本勲さんは記者の取材にしきりと「どうしてこんなことになったのか……」と嘆いていた。