彼が仕事をして、取引先の会社から1万円もらった場合、消費税10%をもらい、計1万1000円をもらいます。
彼は仕事の経費として2000円を支払いました。これにも消費税10%がつくので、支払ったのは計2200円です。
消費税の計算では、1年間でもらった消費税から、払った消費税を引いて、その差額を税務署に納めます。
なので、彼はもらった消費税1000円から、支払った消費税200円を引いた差額の800円を税務署に納めることになります。
1年間に行う取引が多いと、この計算が非常に大変になります。
そのため、消費税は納税者に酷な制度だと言われています。
インボイス制度で消費税がさらに複雑に
しかも、インボイス制度によって、この仕組みがさらに複雑になります。
まず、事業主はインボイスの登録をして、13桁の登録番号をもらいます。
次に、1万円の仕事をして、消費税込み1万1000円をもらう時に、「インボイス」つまり登録番号と消費税率が記載された請求書を提出します。
また、仕事の経費についても、買い物をしたお店から「インボイス」をもらう必要があります。
このように、消費税を「インボイス」を基に計算することになる分、消費税の仕組みがより複雑になります。
財務省のねらいは「益税の廃止」
なぜわざわざこんな面倒なことをするのでしょうか。
理由は、「国にとってメリットが大きい」からです。
「インボイス」には税率が明記されるため、税率をごまかす不正を防止できます。
また、国は登録番号を使って、すべての取引を追跡することも可能になります。そのため、不正や脱税を減らす効果が期待できます。
もう一つの大きな理由が、「益税の廃絶」です。
年間売り上げが1000万円以下の事業者は、事務負担が大きいため、消費税を免除されています。
つまり、売り上げ1000万円以下の事業者は、1万円の仕事をして消費税を1000円もらうと、その1000円が収入になります。これが「益税」です。