いまや電気、ガス、水道と並んで社会生活に欠かせなくなったインターネット。国内ドメインの約8割、サーバーの5割超のシェアを持つGMOインターネットグループが、持続可能かつよりよい社会を目指して取り組むこととは。
見えないところでインターネットを守る

代表取締役グループ代表
会長兼社長執行役員・CEO
Masatoshi Kumagai
1963年長野県生まれ。'91年の会社設立から、'95年にインターネット事業を開始し、'99年上場。2022年、GMOインターネットグループに社名変更。インターネットインフラ、広告、金融、暗号資産の4セグメント、上場企業10社を含むグループ企業110社からなるGMOインターネットグループを率いる。
「すべての人にインターネット」を合言葉に、インターネットの黎明期から新しい価値を生み出してきたGMOインターネットグループ。見えない部分でも私たちの暮らしをしっかり支え、様々な脅威から守ってくれている。
「電気、ガス、水道といった生活インフラはどれが止まってもすぐ生活に困るものですが、現在はインターネットが止まってしまった時の影響が目に見えて大きいかもしれません。大切なインターネットをここまで広げ、皆さまの生活をお支えできるのは、歴史的にも幸せな状況であると自覚しています」
2020年1月、コロナ騒動が始まった際にいち早くリモートワークを導入したことでも知られ、全国的に在宅勤務が本格化した4月には印鑑廃止を提唱、電子印鑑を普及させた。
「当時、在宅勤務にもかかわらずハンコのために出社せざるを得ないことに疑念を持つ人は多く『捺印痛勤』という言葉が流行し、問題になっていました。ならばGMOインターネットグループがまず率先してサービス申し込み時のハンコを廃止してしまおう。そう考え、宣言してからわずか44時間44分で完全廃止を実現、想像以上の反響をいただきました。そして電子印鑑GMOサインというプロダクトを1年間無償で提供するキャンペーンを展開、世の中の脱ハンコをお手伝いさせていただくことができました」
こうしたスピード感を実現できる背景には、パートナーと呼ぶグループの社員約7200名が共通認識を持ち、自らの判断で行動することを是とする企業姿勢がある。
「GMOインターネットグループのビジョンや経営マインド、組織としての心構えなどを『GMOイズム』という冊子にまとめ、パートナー全員が携帯しています。素早い決断を支えているのは、こうした仕組みを徹底していること。この仕組みづくりこそ私が経営者として行なってきた中で最も誇れることだと思っています」

現在、グーグルやヤフーなどの検索結果で表示されるドメイン(インターネット上の住所のようなものでURLの一部)のうち、約8割がGMOに登録されているものだ。また、そこで表示されるウェブサイトの5割超、およそ100万サイトがGMOインターネットグループのデータセンターで管理されている。
「もし万が一私たちのサーバーが停止することになれば、日本の多くのウェブサイトを見ることができなくなってしまうかもしれません。持続可能な社会のためには、私たち自身が健全な活動をしていかなくてはならない。その上でお客さまに喜んでいただき、成長を続けていくことを意識しています」
インターネットが健全に機能し、私たちが安心して生活を続けるための大きな課題のひとつがセキュリティの問題だ。セキュリティにもさまざまな種類があるが、GMOインターネットグループが力を入れているのは暗号セキュリティとサイバーセキュリティの分野。
「暗号セキュリティは、たとえば皆さまの個人情報などの大切な情報が漏洩したり、ウェブサイトのデータが改ざんされたりすることのないように暗号化して守るもので『GMOグローバルサインの電子証明書』というサービスを展開しています。インターネットブラウザを見ていただくと窓のところに鍵のマークが見えることがありますが、それは安全に守られているという証。国内のおよそ半数をGMOグローバルサインがお守りしています」
そして、今世界的な脅威となっているサイバー攻撃は、個人や企業のみならず国家のリスクにもなりうる。とくに世界の重要インフラ、例えば政府や発電所、サプライチェーン網などが機能不全に陥る恐れもあり、持続可能な社会の根幹を揺るがす大きな問題になっている。
「それに真っ向から立ち向かっているのが『GMOサイバーセキュリティbyイエラエ』です。サイバーセキュリティは、ハッカーの侵入を防ぐ、あるいは修復するという非常に難度の高い技術が必要になりますが、同社は国内最大規模のホワイトハッカー集団。高度なセキュリティ対策を有し、誰もがいつでもどこでも安心してインターネットを利用できる社会の実現に取り組んでいます」
目に見えない大きな支えを可視化するための取り組みもある。それが、ウェブサイトに導入されているセキュリティ対応済みシール。
「暗号セキュリティについては、GMOグローバルサイン認証済みであるSSL認証サイトシールが、すでに1万以上のサイトで導入されています。また、GMOサイバーセキュリティbyイエラエの脆弱性診断で一定以上の評価を得たサイトに向けて、22年11月から『サイバー攻撃対策サイトシール』の提供を開始しました。サイバーセキュリティでのこうした認証制度は日本初、世界でも初めてです。このシールを今後さらに普及させようと考えています」

地球を守る企業グループへの発展を目指して
未来へ向けた産業のフロンティアへの視線も忘れない。2025年に大阪・関西万博でエアタクシーサービスが開始される予定の空飛ぶクルマに関しても、セキュリティ強化の技術供与を行なっている。
「私はパイロットでもあるので、空の産業革命に関しては以前より高い関心を持っていました。都市部の地上はすでに混雑しており、残されたフロンティアは空。自動制御できる空飛ぶクルマは、新しい交通インフラとしての実装が待たれています。電動のためCO2の排出も抑えることができ、車やジェット機よりもクリーンな存在です。そこで私たちがお役に立てるのは、セキュリティの分野。私たちのサイバーセキュリティでハッキングを防止し、空の安全をお守りしようと動き出しています」

さらにその先、まだ見ぬ未来にも目を向けて人々を救い、地球を守る企業に発展したいと思いを馳せる。
「地球の温暖化は、今後何としても解決しなくてはならない課題です。たとえば宇宙船を飛ばして太陽と地球の間にミラーを設置し、太陽光の調節をする。そこで起きうる問題点をAIで解析しながら、地球全体の温度管理をするようにしてはどうか。まだ夢物語のような構想かもしれませんが、こうした課題に対して真摯に取り組み、地球を救うお手伝いのわずか一部でもできるような企業グループであり続けたいと願っています」
笑顔の循環を100年単位で
未来を創造するためには、次世代の人財育成も欠かせない。小学校にプログラミング授業が導入された現在、ITスキルは必須となり、さらに高度な技術や発想力が求められる。
「今後、日本が成長を続けるためには、科学技術に加えてリベラルアーツの視点も持ち合わせたクリエイティブな『STEAM人材』の育成が重要だと考え、次世代へ向けたさまざまなプロジェクト、サービスを展開しています」


たとえば、子どもたちに優良なプログラミング教室を紹介するポータルサイト「コエテコ byGMO」、教育支援プロジェクト「GMOデジキッズ」、他企業との共同プロジェクト「Kids VALLEY」などの次世代の育成施策に加え、『~No.1&STEAM人財採用~新卒年収710万円プログラム』という新卒年収を最高水準にするプロジェクトも始動させた。
「私たちが提供するサービスでお客様に喜んでいただき、パートナーがそのサービスを提供できることに誇りを持って笑顔になり、その笑顔の連鎖の結果、利益が生まれ株主の方も笑顔になれる。この笑顔の循環を100年単位で続けることが私たちの願い。様々な地球の課題を解決できる企業グループにさらに成長してゆきたいと願っています」
Text:Ayaka Sagasaki
Photo:Miki Fukano
