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清水建設が狙う「環境への負荷ゼロ」のその先の景色

PR提供: 清水建設

創業1804年(文化元年)、江戸時代からの長い歴史を誇る清水建設。スーパーゼネコンとして建築から土木まで幅広い分野で培ったその技術力を活用して、持続可能な社会の実現へ向けて走り続ける。

グループが目指す2050年の社会とは

金子美香氏
清水建設株式会社 執行役員 環境経営推進室長
コーポレート企画室 SDGs・ESG推進部長
Mika Kaneko
1984年、東北大学工学部卒業。同年清水建設に入社し、大崎研究室に配属。地震工学・耐震工学の研究に従事する。'93年、東北大学で博士号取得。2012年、技術研究所 安全安心技術センター所長。'18年コーポレート企画室 副室長 SDGs・ESG推進部長。'21年から現職。
金子美香氏
清水建設株式会社 執行役員 環境経営推進室長
コーポレート企画室 SDGs・ESG推進部長
Mika Kaneko
1984年、東北大学工学部卒業。同年清水建設に入社し、大崎研究室に配属。地震工学・耐震工学の研究に従事する。'93年、東北大学で博士号取得。2012年、技術研究所 安全安心技術センター所長。'18年コーポレート企画室 副室長 SDGs・ESG推進部長。'21年から現職。

――まず最初に、金子さんが室長をされている「環境経営推進室」についてお聞かせください。

金子 「環境経営推進室」は2021年4月に創設された社長直轄の組織になります。役割としては、大きく二つあります。一つは環境経営を推進することで、自社のバリューアップを図ること。もう一つは、お客さまや社会にプラスの環境価値を提供することで、お客さまと社会のバリューアップを図ること。この二つを通じて、当社の持続的な事業の発展に寄与していくことがミッションです。

――御社が環境経営に取り組むようになったのは、いつ頃からのことでしょう。

金子 1991年、「清水地球環境憲章」を制定し、「地球環境室」を新設したのが始まりです。この部署を中心に、環境基本方針や生物多様性ガイドラインを定めたりしてきました。

 2016年にCO2排出量削減の中長期目標「エコロジー・ミッション2030-2050」を策定し、2018年には環境省から「エコ・ファースト企業」に認定されました。さらに、2019年にはSBT(科学的根拠に基づくCO2削減目標)認証を取得、「TCFDコンソーシアム」にも参画しました。

――TCFDというのは?

金子 気候関連財務情報開示タスクフォースの略です。企業は投資家から、気候変動が自社事業に与えるリスクと機会を分析して経営戦略に組み込むこと、そしてそれらの情報を開示することが求められています。当社は気候変動による事業への影響を重要な経営課題の一つと捉えて、2019年10月にTCFD提言への賛同を表明するとともに、2020年からこの提言に沿った気候関連の情報を開示しています。

――そうした取り組みの延長線上に、2021年発表された「SHIMZ Beyond Zero 2050」があるわけですね。

金子 社会でも環境に対する関心が非常に高まってきています。当社は、今までもいろいろ目標を立てたり、情報開示をしたり、ということはやってきましたが、2021年度「環境経営推進室」が新たに創設されたこともあり、2050年までにシミズグループが目指す社会とはどのようなものなのか、そのために私たちは何ができるのか、これをあらためて整理しようということで、グループの環境ビジョンを策定したわけです。

――「Beyond Zero」という表現が目を引いたのですが、そこに込められた思いとは?

金子 自社活動で環境に負の影響を与えない、ゼロにするということと同様に、プラスの価値をお客さまや社会に提供していきたいという思いを込めて、「Beyond」という言葉を使いました。

――ゼロを超えて、さらにその先へ、ということですね。概要をお聞かせください。

金子 2050年にありたい社会というのを、「脱炭素社会」「資源循環社会」「自然共生社会」という三つの言葉で表しました。それぞれについて、自社による負の影響ゼロということと、プラスの環境価値の提供ということで整理しています。

 まず「脱炭素社会」では、自社の作業所、オフィスからのCO2排出をゼロにする。それに加えて、自分たちで設計した建物の運用時のCO2の排出もゼロにしていこうと考えています。建物のライフサイクルを考えると、施工のときに排出するCO2よりも、何十年と使い続ける間に出すCO2の量のほうが大きいんです。材料からはじまって、施工し、建物を運用するところまで、建物のライフサイクルを通して脱炭素社会に貢献していきたいと思っています。

日本最高クラスの環境性能を備える「清水建設北陸支店」。北陸地域初となるネットZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を実現。
日本最高クラスの環境性能を備える「清水建設北陸支店」。北陸地域初となるネットZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)を実現。
産業技術総合研究所と共同で開発した建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC®」。写真は上段の北陸支店の社屋に実装されている様子。
産業技術総合研究所と共同で開発した建物付帯型水素エネルギー利用システム「Hydro Q-BiC®」。写真は上段の北陸支店の社屋に実装されている様子。

――二つ目の「資源循環社会」についてはいかがでしょう。

金子 地道な取り組みとしては、現場での「4R活動」があげられます。「リデュース」「リユース」「リサイクル」、ゴミを減らし、リユースして、リサイクルするという「3R活動」が一般的なんですが、当社では現場に梱包材など廃棄物となるものをできるだけ持ち込まないという「リフューズ」を加えて、「4R活動」と言っています。現場において環境リスク管理を徹底し、省資源化と資源の有効活用を全社一丸で推進しています。

 ほかにも、オリンピック開催にむけて、東京ビッグサイトで施工した仮設の展示場があります。これは十年くらいで壊すことになっていますので、壊したときにリサイクルができる建物という条件で計画・施工しました。工法や部材にいろいろ工夫をこらした結果、この建物は3R推進協議会の内閣総理大臣賞をいただきました。

――資源循環というと、先般、記者発表が行われた「シミズめぐりの森」もそうですよね。

金子 はい。群馬県の川場村で、自治体から山の土地を3ヘクタールほどお借りして、自社で植林活動を始めることにしたんです。

 最近、お客さまから木造の建築をという依頼が増えています。いままでは防火の面で低層しか建てられなかったのが、耐火性能をもった部材を開発したことで、中高層建物も建てられるようになりました。そういったことで木を使った大規模な建築が増えてきたのですが、成長した木を切って使うわけですから、それは環境にいいの? ということになります。やはり「伐って、使って、植えて、育てる」という、循環をきちんとさせようと。

持続可能な「自然共生社会」を

――だから「めぐりの森」なんですね。三つ目の「自然共生社会」。これはどういう取り組みでしょう?

金子 グリーンインフラを通して「プラスの環境価値」を創出していきたいと考えています。グリーンインフラとは、自然がもつさまざまな機能を賢く活用して持続可能で魅力的なまち・地域づくりを目指すという考え方です。

 たとえば、森林を適切に管理することは、防災や生物多様性の向上につながりますし、まちにみどりを増やすことで、ヒートアイランド現象の緩和やコミュニティの形成などに役立ちます。

 これまで当社は、さまざまな地域で、生態系を尊重しながら自然環境や生物多様性を保全・回復する技術やノウハウを培ってきました。その技術やノウハウをプラスした「グリーンインフラ+(プラス)」をお客さまに提供することで、持続可能な自然共生社会に貢献したいと思っています。

 

――事業活動による負の影響をゼロにして、さらにプラスの環境価値を創出しようという「SHIMZ Beyond Zero 2050」の理念は、まさにSDGsですね。

金子 当社では、明治時代に相談役としてお迎えした渋沢栄一翁の『論語と算盤』を社是としています。渋沢翁が説かれた「道徳と経済の合一」は、いま企業に求められている「事業を通じた社会課題の解決」と親和性があります。富を追求するのは悪いことではない。富を追求しながら、同時に社会に貢献することが重要である、と。この考えは、現在のSDGsに通じるものだと思っています。

――御社の取り組みのバックボーンには、渋沢栄一氏の精神がある、ということですね。大変興味深いお話、ありがとうございました。

SHIMZ Beyond Zero 2050 特設サイト

Photo:Asami Enomoto