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心筋梗塞、脳卒中、認知症…「痛くないから大丈夫」と歯医者に行かなかった人の老後に待ち受ける悲劇

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genre : ライフ, 医療, ヘルス

「オーラルフレイル」(口腔機能の衰え)は、食べ物を噛んだり飲み込んだりする機能が低下するだけでなく、全身の健康状態に大きな影響を与えることがわかってきている。産業医の池井佑丞さんは「歯の健康が、糖尿病や心臓病、脳卒中、認知症の引き金になったり悪化させる要因になったりすることがわかっている。『歯医者は、歯が痛くなってから行くもの』という考えはあらためたほうがいい」という――。

写真=iStock.com/gyro ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro

「オーラルフレイル」対策と健康寿命

日本が高齢化社会と言われるようになって久しいなか、ご自身やご家族の健康寿命をできるだけ延ばしたいとお考えの方が多いのではないでしょうか。

健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことで、2019年の統計によると、男性は72.68年、女性は75.38年となっています(第16回健康日本21(第二次)推進専門委員会 資料3-1健康寿命の令和元年値について「健康寿命の推移」 )。国も健康寿命を延ばすことを重要な課題と位置付けており、健康な状態と要介護状態の中間である「フレイル」への対策の必要性を指摘しています。

フレイルとは、fraily(虚弱)の訳語です。加齢により身体・認知機能などが徐々に低下するのは避けられません。ですがフレイルは、まだ自分の意志でコントロールができる自律性があり、この段階で適切な対策をとれば健康な状態に戻ることができます。

フレイルはさまざまな要素が関係して進行しますが、食べ物を噛む(咀嚼)機能や飲み込む(嚥下)機能の低下は、全身のフレイルの前兆として捉えられており、特に口腔機能に着目したフレイルは「オーラルフレイル」と呼ばれています。

高齢者の社会的孤立にもつながる

オーラルフレイルを理解する際に大事なのは、オーラルフレイルという概念の範囲が単に口腔内の衰えだけを指すのではないことです。

口腔内の衰えといえば、直接的には噛めないことや飲み込めないことをイメージすると思いますが、食事の際にむせる、滑舌が悪くなることも口腔の衰えに該当します。これらが積み重なると、食べられるものが減ったり、食事を敬遠してしまったり、コミュニケーションをとることが億劫になったりしますが、こうした間接的な影響もオーラルフレイルに含まれます。