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「真美さんと一緒に広告を見ていたのを覚えています。真美さんは『私も働くから』って、言ってましたけど……」

ところが、いつまでたっても真美が仕事を探す様子はなかった。日中の仕事の給料だけでは回らない家計をなんとかするために、章寛は夜のバイトまで探さなければならなくなった。山本家を信頼しているわけではなかったが、一生懸命家族に尽くしている章寛を見て、親としてできることはしてあげたいと、和代は定期的に米や野菜を章寛に送っていた。

不自由な思いをしないようにと、現金5万から15万円を段ボールに忍び込ませて送ることもあった。真美からはお礼のメールが届くのだが、信子からは、「許さない」「お米がない」といったメールが入るのだ。和代もまた、信子の不可解な行動に振り回されていた。

奥本家がいくら経済的な援助をしても、章寛の表情が昔のように明るく戻ることはなかった。たまりかねた和代は、章寛に「つらかったら戻っておいで」と言っていた。それでも、「お義母さんおいては帰れん」と、章寛が宮崎を出ることはなかった。

理不尽な暴力を受け、身体的、精神的に追い詰められていった

「若いのに寝るな!」

ある日信子は、肉体労働でクタクタになって床に就く章寛から、布団を取り上げ蹴りつけた。章寛に対する信子の暴言・暴力は、次第にエスカレートしていった。また、「離婚するなら慰謝料をガッツリ取ってやる!」と脅され、その請求が両親に行くことを恐れていたともいう。

体格が良く、元自衛官の章寛が女ひとりに敵わないわけはない。しかし、章寛が幼い頃から身につけてきた忍耐や自己犠牲が、対抗することを躊躇させたのではないかと思われる。結局、義母の理不尽な行動や暴力を許してしまう結果となってしまった。

信子も章寛の弱点を見透かし、何をしても反撃されることはないだろうと高をくくっていたのだろう。それでも章寛は、義母のことで悩んでばかりいるわけにはいかなかった。当時、章寛は約600万円の借金を抱えており、幼子の世話で忙しい妻に働いてもらうわけにはいかず、仕事を増やさなければならなかった。信子の暴力性については、元夫も認めていた。