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さらに不可解だったのがアルバム外の写真で、アルバム内の写真と同じときに撮影したとおぼしき写真に加え、誰かわからない子どもの写真が2枚あった。

資料の確認を終えたときには、すでに日は暮れて外は薄暗くなっていた。大阪へ帰る電車に揺られながら、これからどうしようかと思案に暮れた。3日前に太田弁護士からZoomで聞いた話は、今日の作業で多くが裏付けられたのは間違いない。

もちろん、最初に調査に入った警察にも話を聞く必要があると思ったが、記者発表した事件でもないし、取材対応してくれるかどうかは望み薄だった。

警察も探偵も見逃した情報はあるのか

まずは大家など、資料に出てきた関係者に直接当たるべきだろう。探偵の仕事をある程度トレースする作業である。聞き込みも繰り返したいが、プロが1カ月かかって大した成果を上げられなかったことを、記者が本業の合間に片手間でしてもしょうがない。地域で右手指のない女性の存在が知られていたかどうかぐらいは、ちょっと商店街を聞き込むだけで手応えがわかるだろうし、それでよしとすべきと思った。

聞き込みで力を入れるとするなら、やはり元勤務先の製缶工場だろう。探偵は経営者一家を追おうとして失敗したようだが、経営者にこだわらず従業員ではどうか。誰か関係者を一人、見つけられたら十分なのだ。女性はなぜ労災事故に巻き込まれたのか。それが孤独な生活を送るようになったきっかけなのか。女性には夫がいたのかどうか。なぜ労災支給を打ち切ったのか。そのあたりは、かつての同僚に聞けばわかるはずだろう。

また、「田中竜次」さんの勤務先となっていた富士化学紙工業も気にかかる。警察の照会では虚偽の勤務先だったそうだが、それも間違いないのかは自分の目で確かめてみたい。最も、正攻法で企業に電話しても取り合ってもらえないだろうから、1980年代に在籍していた社員を探し出す必要がある。

写真類に関しては、一度伊藤と細かくチェックして、画像の中に何かしらの手がかりが写り込んでいないかを徹底的に洗うべきだろう。警察も探偵も見逃がしている情報が隠されているかもしれない。