丸岡氏が次のように解説する。
「B子さんは『お金がない』とおっしゃっていますが、再婚相手が同居しており、買い取りのためにローンを組むこともできます。要するに、長年住んだ家なのに、自分が買い取らないといけないのが口惜しくなったのでしょう。
こうしたケースの場合、たいてい2人だけでは感情的になり、建設的な話し合いが難しい。もし裁判に持ち込んだとしても、離婚した時の状況によっては話がなかなか進まず、元妻を家から追い出すような心象を裁判官に与えると、A男さんは不利になります。やっと話し合いがついて家を売ろうにも、競売物件になって二束三文で買い叩かれる可能性も少なくありません」
この件の場合、ネクスウィルはA男さんからの打診を受け、まずは彼の共有名義の持ち分を買い取った。さらに同社はB子さんに対して、A男さんの持ち分だったものを購入するか、逆にB子さんが自分自身の持ち分を同社に売却するか、どちらかを選んでいただきたい、と依頼した。
「元夫であるA男さんとの話し合いは拒否しても、私どものような第三者が介入することでB子さんもようやく交渉の席につきました。裁判に持ち込めば、たとえ自分が不利ではなくても、時間もお金もかかって心身ともに疲弊することが多いのをB子さんはご存じだったようです。家を手放したくないB子さんは、弊社が買い取ったA男さんの持ち分を購入されました」
DV夫と別れるため「共有名義の持ち分を売りたい」
もうひとつの例は、同社に相談したC子さん(60代・女性)の場合。最近増加中の熟年離婚をしており、かなりドラマティックだ。
C子さんは、夫・D男さんからのDVに長い間苦しめられていた。そこで共有名義の家の自分の持ち分を売り払い、夫と別れ、違う場所で一人暮らしをしたいと思うようになる。しかし、そんなことを夫に言い出そうものなら、どんな仕打ちを受けるかわからない。困り果てたC子さんは、秘密裡に行動を起こせないかとネクスウィルに相談した。