文春オンライン

source : 提携メディア

同社のスタッフは、顧問弁護士と相談しながら一計を案じる。

まずC子さんは夫と同居を続けながら、夫に内緒で自分の住民票だけ別の住所に移し、その住所を使って自分の持ち分の売却をした。そして「買い物に行ってきます」と言って出て行き、それっきり家に戻らなくなった。

後日、D男さんの元には離婚届が送られ、追い打ちをかけるように、ネクスウィルから「共有名義のあなたの持ち分を弊社に売却されますか、それともC子さんの分を購入されますか?」という連絡を受けた。驚愕(きょうがく)したD男さんだが、C子さんに連絡を取ろうにも行方知れず。彼女は自分の持ち分を売却後に、また違う場所に引っ越した。だから、D男さんはC子さんの居場所を突き止められない。しかも彼女の携帯電話は解約されていた。

D男さんはわけもわからないままに家を売ることになり、同時に結婚生活も破綻してしまった……。D男さんからすれば寝耳に水の展開だが、DVをしてきた自業自得と言えるかもしれない。

きょうだい間で揉め、“とりあえず”棚上げにしたことが災いに

共有名義で揉めるのは、夫婦間だけではない。

両親が亡くなった後、きょうだい全員で相続して揉めることがある。土地や家以外に、相続できる預金、有価証券などがあれば、話し合いでそれぞれの財産をきょうだいで分配すれば平和的に解決することができる。しかし土地と家しかないときは、それが火種となる場合がある。

それはどんな場合か。丸岡氏は語る。

「たとえば、相続した家と土地が都心部にあるのならば、不動産の価値が高い。それを見越して、両親の面倒を見ていた3人きょうだいの長男が家を相続したいと主張し、他のきょうだいがそれに反対したとします。話が膠着(こうちゃく)状態になって解決できないので、“とりあえず”3分の1ずつの共有名義にします。しかしその後、上の2人は売りたくないが、弟1人が売りたいと言いだし、きょうだい間に齟齬(そご)が生じ、泥仕合になることがあります」