一方、きょうだい間で争わなくても問題になることがある。亡くなった両親が家と土地を遺したが、子供たちは皆地元から離れており家に住む者はいない。しかし親が苦労して建て、思い出深いわが家を手放すのは忍びないと子供たちは思う。だから、この場合も“とりあえず”きょうだいの共有物件にしておき、なし崩し的に固定資産税を払い続ける。年月が経つうちに家と土地の価値が下がり、買い手がつきにくくなる。しかし税金は払わなければいけないという負のループだ。
この件も“とりあえず”の判断を後悔するパターンだ。
「問題を解決せずに“とりあえず”放置しておくと、そのうち相続者が亡くなることがあります。そうなると次の世代の子供が相続するので、さらに名義が細分化されます。世代が下るに連れて相続人数が増えて、極端なケースでは100人単位の共有名義人が出現する場合があります。弊社のような不動産会社が介入して、名義人を追跡して、各々の持ち分を売買すればいつか解決しますが、うまくいかないこともあります」(丸岡氏)
共有物件が再建築不可の場合は、最悪のケースに
それはどんなケースかというと「共有名義」かつ、前述の「4つの瑕疵物件」である土地と家だ。
なかでも厄介なのが法律的瑕疵物件だ。現行の建築基準法の接道義務(原則として幅4m以上の道路に2m以上接していないといけない)を満たしていないと、住宅は取り壊したとしても、その敷地内では新しい家は再建築不可となる。それゆえ、どんなに低い価格設定をしても転売は難しくなる。
丸岡氏は続ける。
「日本にある家の3分の1は、接道義務を満たしていない再建築不可の住宅と言われています。その家を引き継いだ子供たちは、売却できなければ固定資産税だけを払い続けることになります。しかし、その下の世代になると引き継ぎもされず、所有者不明の空き家となってしまうこともあります。そんなふうに空き家になってしまった家の面積を合わせると2016年の段階で九州本島を上回る規模に達し、2040年には北海道ぐらいの大きさになるだろうとの試算があります(※)。空き家といえども、所有者の許諾なしに処分することができないので、道路の整備などの公共事業にも影響を与えます。これを防ぐ意味もあって、2024年には相続登記が義務化されることになります。今後、空き家問題がさらに顕在化するでしょう」