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「どう生きればいいのかわからない」ひとり耐え忍ぶ虐待サバイバーたち “家族”を前提にする日本の福祉制度の問題点

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genre : ニュース, 社会

高山祐介さん(27歳)は、18歳から生活保護を受けている。最初に生活保護を申請したとき、高山さんは「どう生きればいいのか、わからない」と話した。精神保健福祉士の植原亮太さんは「日本の福祉制度は『家族』を前提にしているため、親に頼れなかった高山さんは制度の隙間に落ちてしまった」という――。

※本稿は、植原亮太『ルポ 虐待サバイバー』(集英社新書)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Rattankun Thongbun ※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rattankun Thongbun

なぜ困窮者はひとり耐え忍ぶのか

虐待を受けてきた人が生活保護を受けることになる際の共通点がある。それは、どんな困難に陥ったときも、人に頼らず、頼れず、孤立しながら生きているということである。

それを実感したのは、私が彼らの話を積極的に聞くようになってからだった。

不思議だった。こんなにも困窮しているのに、なぜひとりで耐え忍んでいるのかが。

私が彼らと関わる経路は2通りある。担当ケースワーカーか福祉や医療関係者からの依頼、または受給者本人が相談を希望した場合、である。

私が初回で聞きとることはおおむね決まっている。ひとつ目は、相談したいことはどのようなことなのか、ふたつ目は、抱えている問題に対して家族(主に親)は、どう言って、どう反応しているのかである。このふたつ目の質問に対しての返答で、通常とは異なる家族の様子があきらかになることがある。

若くしてがんを患った28歳女性

事例A ひとり、病院のベッドのうえ

佐々木瞳さん(28歳)は、入院する病院のベッドのうえで生活保護の説明を受けた。彼女はがんの治療で入院中だった。病院の医療ソーシャルワーカーの勧めで、生活保護を受けることにした。治療のために、預貯金は底を突きかけていた。

そんな彼女と私が会うことになったのは、退院後の療養中にカウンセリング(心理療法)を受けられる場所はないかと、病院に出向いたケースワーカーに彼女が質問したことがきっかけだった。

退院後、私は彼女の話を聞いた。

「仕事中に倒れてしまって。最初は貧血だと思ったんです。だけど、病院では『すぐに検査!』ってなって、なんか様子がおかしくて。それで、しばらく入院することになったんです。そうしたら、がんでした。結構、大きくて、若くて進行も早いから、すぐに手術をしたほうがいいと。実は、翌月から管理職として新しい会社へ入社する予定だったんですけど、それもなかったことに……。で、生活保護。